2011 Fiscal Year Annual Research Report
ダッチアイリスにおけるアントシアニン生合成機構の解明とその育種的応用
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22580007
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
藪谷 勤 宮崎大学, 農学部, 教授 (70112414)
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Keywords | ダッチアイリス / アントシアニン / ポリアシル化 / p-クマル酸 / マロン酸 / アントシアニン生合成遺伝子 / ゲノム遺伝子 / DFR遺伝子 |
Research Abstract |
本年度、新たに供試したダッチアイリスの濃紫品種「照紫」における外花被含有アントシアニンをHPLIC分析するとともに、精製したアントシアニン成分はLC-MS分析を行った。その結果、昨年度に分析した品種「Blue Diamond(BD)」では、検出されなかったペチュニジン3-(p-クマロイルルチノシド)-5-グルコシド(Pt3pCRG5G)やマルビジン(Mv)3pCRG5G)が同定された。また、分子量からマロニルPt3pCRGおよびマロニルMv3pCRG5Gが推定された。次に、アントシアニン生合成に関与する新たな遺伝子(F3'5'H、3RTなどのcDNA)の単離を試みたが、その全長を獲得するまでには至らなかった。これに対して、白色花品種「White Wedgewood(WW)」と青紫花品種「BD」を供試し、「WW」におけるジヒドロフラボノール4-レダクターゼ(DFR遺伝子の発現が欠損している原因を解明するために、まず「BD」から単離されているDFR遺伝子(IhDFRcDNA)を鋳型としてnested PCRを行い、両品種におけるDFRゲノム遺伝子(IhDFRgDNA)を単離した。その結果、単離された両品種のDFRゲノム遺伝子が5つのエクソンからなる1,086bpのORFと、4つのイントロンから構成されていること、その内部にDFR遺伝子発現の欠損につながるナンセンス変異やフレームシフト変異を有していなかった。従って、「WW」におけるDFR遺伝子の発現が欠損している原因として、遺伝子の構造自体に異常がないことが確認された。このように、ゲノム遺伝子が単離されたのは、本研究がアヤメ属で最初である。そこで現在、DFRゲノム遺伝子を用いてInverse PCRを行い、「WW」および「BD」におけるこの遺伝子の5'上流領域配列を単離し、その比較解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アヤメ属植物では新規のアントシアニンであるコーヒー酸やマロン酸でアシル化されたアントシアニンを発見するとともに、アントシアニン生合成遺伝子、DFRのゲノム構造について本属で最初に解明した。また、新たなアントシアニン生合成遺伝子として、F3'5'H遺伝子のほぼ全長のクローニングにも成功しており、本研究はおおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、次年度の課題、すなわちダッチアイリスで単離されたアントシアニン生合成遺伝子をモデル植物であるペチュニアに導入し、獲得したペチュニア形質転換体における花色やアントシアニンの特性解明および導入遺伝子の発現解析により、本種のアントシアニン生合成遺伝子の育種ツールとしての有用性を検討する。また、アントシアニン生合成遺伝子、DFRゲノム遺伝子の5'上流領域配列を解析することにより、花色の白色化機構を解明するとともに、発見された新規アントシアニンのNMR解析ばかりでなく、ダッチアイリスの花色発現に重要なアントシアニンの補助色素であるフラボンについても新規成分の探索を行う。
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Research Products
(4 results)