2012 Fiscal Year Annual Research Report
極穂重型イネ品種の登熟能力向上に寄与する良登熟型遺伝子の機能解析
Project/Area Number |
22580020
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
加藤 恒雄 近畿大学, 生物理工学部, 教授 (70149748)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | イネ極穂重型品種 / 定量PCR / 登熟 / ショ糖トランスポーター / ADPグルコースピロホスホリラーゼ / 分子マーカー / 塩基配列多型 |
Research Abstract |
1 ショ糖トランスポーター1遺伝子(SUT1)の翻訳開始点から465 bp上流に挿入されたトランスポゾンPingの登熟程度に及ぼす影響を,5挿入系統および5非挿入系統を用いて検討した.その結果,比重1.00以上の穎果の割合としても比重1.13以上の穎果の割合としても,登熟程度は本mPing挿入によって有意に低下したことが明らかになった.また,開花後の粒重増加速度も,本mPing挿入によって有意ではないものの低下した.一方,発育胚乳中のSUT1の発現量を定量PCRによって検討したところ,本mPingの挿入の影響は有意とはならなかった.これらの結果から,SUT1の上流にトランスポゾンが挿入されたことによってSUT1の機能に何らかの影響がおよび,その結果,登熟程度や粒重の発育が低下したことが推察された.一方で発育胚乳におけるSUT1発現量に影響が出なかったことについては,転写ではなく翻訳での低下,もしくはシンク器官ではなくソース器官におけるSUT1発現量の低下が考えられる. 2 登熟に関わると考えられるSUT1およびAPS2(AS2)に加えて過去に報告した,ADPグルコースピロホスホリラーゼ大サブユニット2遺伝子(APL2)における塩基配列のデータを詳細に検討した結果,APL2においては供試した6品種に関する限り合計4種類のハプロタイプすなわち対立遺伝子の存在が明らかになった.このうちの1遺伝子は,極穂重型品種で比較的登熟の良好である密陽23号とタカナリが同一の遺伝子(APL2-2とする)を共有していた.また同様に登熟が良好な南京11号はこのAPL2-2と一か所のみ配列が異なるAP2-4を持っていた.本遺伝子によってタカナリが良登熟表現型を示す可能性が示唆された.このようなAPL2-2を判別できるIn/Delマーカーを開発した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来のAPS2およびSUT1に加えて,新たにAPL2においても良登熟型対立遺伝子が存在する可能性が明らかになった.この遺伝子型を判別する分子マーカーも開発できた.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究の結果,イネ極穂重型品種の登熟程度に関する遺伝子座としてAPS2,SUT1およびAPL2が挙げられることが分かった.このうちAPL2については4種類対立遺伝子が存在するが,APS2とSUT1については未だ6品種の中で見られた2種類のみである.今後は,これらのAPS2およびSUT1における塩基配列多型のうちCAPSマーカー等簡便に識別できるものについてなるべく多くの品種を用いて検討し,新たな対立遺伝子を探索するとともに,最も登熟向上に寄与するものを同定する.さらに,APS2,SUT1およびAPL2での対立遺伝子の組み合わせのうち,やはり最も登熟を高めるものはどの遺伝子型であるのかについても検討する.
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