2010 Fiscal Year Annual Research Report
植物細胞壁における異物認識・情報伝達・防御応答のダイナミズム
Project/Area Number |
22580051
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
豊田 和弘 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 准教授 (50294442)
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Keywords | 細胞壁 / 異物認識 / 情報伝達 / 防御応答 / サプレッサー / ジャスモン酸 |
Research Abstract |
エンドウ褐紋病菌が生産するサプレッサー(抵抗性抑制因子)は、宿主の細胞壁での病原体認識とこれに続く一連の応答を標的とし、遺伝子応答を伴う防御応答の発現を著しく抑制(遅延)する。今年度は、細胞壁での認識に続く下流の応答に関連する情報伝達機構について、同菌が生産するエリシター(抵抗性誘導因子)とサプレッサーを用いて詳細に調べた。その結果、エリシターはサリチル酸経路の指標遺伝子PR10-1を活性化したが、サプレッサーとの共存下にはその活性化は著しく抑制された。そこで、防御応答の抑制(遅延)におけるジャスモン酸経路とのクロストークの関与について調べる目的で、モデル宿主Medicago truncatulaからジャスモン酸(類縁体の生成も含む)合成への関与が推定される30遺伝子をデーターベースから検索し、これらのサプレッサー応答性について解析した。その結果、恒常発現している遺伝子も一部みられたが、プラスチド酵素をコードするAllene oxide synthaseやAllene oxide cyclaseの他、ペルオキシゾーム酵素をコードするアシル合成酵素遺伝子(ACS)、β酸化関連遺伝子(ACX、KAT)ならびに最終段階で働くチオエステラーゼ(TEase)のいずれもが12-oxo-PDA reductase(OPR)と同調してサプレッサーで活性化されることが明らかとなった。また、ジャスモン酸からイソロイシン誘導体(JA-Ile)を生成するJAR1もサプレッサー応答性であり、処理後15時間以内で活性化した。これらの結果より、サプレッサーは宿主のジャスモン酸合成を転写レベルから亢進し、生成するジャスモン酸を介してサリチル酸に依存した防御機構を一時的に阻害しているものと考えた。事実、LOX、AOSならびにAOC遺伝子を発現抑制したエンドウ葉では褐紋病菌に対する感受性が低下することを確認している。次年度は、サプレッサーによるサリチル酸経路の干渉作用におけるCOI1要求性について解析を進める予定である。
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Research Products
(4 results)