2011 Fiscal Year Annual Research Report
植物細胞壁における異物認識・情報伝達・防御応答のダイナミズム
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22580051
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
豊田 和弘 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 准教授 (50294442)
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Keywords | 細胞壁 / 異物認識 / 活性酸素 / ペルオキシダーゼ / アデニンヌクレオチド / エリシター / 非宿主抵抗性 / 宿主特異性 |
Research Abstract |
エンドウ褐紋病菌が生産するサプレッサーは宿主(エンドウ)の防御応答を抑制するが、非宿主には逆にエリシターとして作用する。これまでに、宿主・非宿主からサプレッサーの標的分子が調べられ、その1つが細胞壁にあるエクト型ATPase(アピラーゼ)であることがわかってきた。今年度は、非宿主であるササゲをモデルとして、サプレッサーに対する初期応答について解析した。その結果、サプレッサーで処理したササゲ葉では15分以内にO^-_2生成が認められた。本生成は、SHAM、SODならびにカタラーゼの投与によって低下し、NADH inhibitor I-1でほぼ完全に阻害されたことから、細胞外ペルオキシダーゼによるNADH(電子供与体)の酸化によるものと考えられた。そこで、O^-_2生成に伴って細胞外に生成する防御因子について解析したところ、病原糸状菌の発芽や付着器形成には影響しないが、付着器からの侵入を阻害する抗菌性物質(感染阻害物質)が新たに生成されていることが明らかとなった。一方、ササゲのエクト型ATPase遺伝子(VsNTPasel)の発現抑制個体を作出したところ、O^-_2生成は著しく低下し、非病原菌による感染が成立するようになった。このことは、細胞壁にあるエクト型ATPase(VsNTPasel)が細胞外ペルオキシダーゼに依存した02--生成と下流の防御応答(感染阻害物質の生成など)を調節し、非宿主抵抗性に深く関与していることを示している。さらに、O^-_2生成を開始するする内生シグナルについての解析から、サプレッサーとADPを共存させたササゲ葉では0.1~10μMの処理でO^-_2生成は促進され、加水分解耐性のADP[β]Sは単独処理で生成を誘導した。これらの結果は、アポプラストでATPの加水分解で生成するADPがO^-_2生成(細胞外オキシダテブバースト)を開始する有力な内生シグナルとして働く可能性を示唆する。本研究結果は、細胞壁にあるエクト型酵素ATPaseによるオキシダティブバースト反応と細胞外アデニンヌクレオチド代謝との関連を新たに指摘したものであり、細胞壁が外界からの異物と積極的に対峙する小器官であることを改めて示したものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
植物細胞壁における異物認識・情報伝達機構について、細胞壁に構成的に存在するエクト型酵素による認識と、それに続く初期応答(細胞外オキシダティブバーストや感染阻害物質の生成)を導く新たな経路を示すとともに、これらの調節にアポプラストにおけるアデニンヌクレオチドが関与することを突き止めることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、細胞壁に構成的に存在し、異物認識に伴って活性化するエクト型酵素の解析から、ATPase(アピラーゼ〉や細胞外ペルオキシダーゼの重要性について明らかにしてきた。次年度(最終年度)では、細胞外に新たに生成する抗菌性物質の構造とその生合成経路を明らかにすることで、「植物細胞壁における異物認識・情報伝達・防御応答のダイナミズム(当該研究課題名)」について総括したい。
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Research Products
(9 results)