2011 Fiscal Year Annual Research Report
ツマグロヨコバイの唾液に存在するカルシウム結合タンパク質の師管吸汁に果たす機能
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22580063
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Research Institution | National Institute of Agrobiological Sciences |
Principal Investigator |
服部 誠 独立行政法人農業生物資源研究所, 昆虫科学研究領域, 研究専門員 (60370673)
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Keywords | ツマグロヨコバイ / 師管吸汁 / 唾液 / EF-ハンドモチーフ / カルシウム結合タンパク質 |
Research Abstract |
ツマグロヨコバイがイネから吸汁する過程でEF-ハンドモチーフをもつカルシウム結合タンパク質を唾液として吐出していることを明らかにしてきた。本課題では、本タンパク質が師管からの吸汁達成にどのような機能を果たしているかを明らかにすることを目的に定め、研究を進めている。本年度の研究成果は以下の通りである。 1)分子量84kDaのEF-ハンドタンパク質(以下NcSP84と呼称)遺伝子について唾液腺、中腸、マルピーギ管、皮膚の各器官での発現をRT-PCRで調べたところ、唾液腺だけで特異的に発現していることが確認できた。 2)そこで、唾液腺における細胞レベルでのmRNAの分布を調べるため組織切片を用いてinsituハイブリダイゼーションを実施したところ、唾液腺主腺で最大のローブである第三細胞内で強い発色が観察され、本組織での遺伝子が発現していることが明らかになった。 3)さらに、ツマグロヨコバイ頭部抽出物から精製したNcSP84タンパク質でウサギを免役して得た抗体を用いて、唾液腺をホールマウント免疫染色したところ、第三細胞全体の発色が確認され、この部位でタンパク質として蓄積されていることがわかった。 4)次に、唾液腺第三細胞に蓄えられたNcSP84タンパク質が、イネ吸汁時に唾液として師管内に注入されているか否かを調べるため、5葉期のイネにプラスチック円筒(径1.5cmx長さ5cm)をセットし、そこにツマグロヨコバイ成虫5頭を放飼し、16時間後にトビイロウンカに入れ替えた後、レーザースタイレトミー法で師管液を採取し、電気泳動後に免疫染色した。その結果、あらかじめツマグロヨコバイを接種した師管液においてNcSP84が検出されたことから、NcSP84は吸汁の過程で師管内に注入されていると推測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ツマグロヨコバイ唾液から同定されたNcSP84遺伝子は唾液腺特異的に発現しており、主腺第三細胞に蓄積されていることを明らかにできた。さらに、本タンパク質はイネから吸汁する過程で唾液として師管内に注入していることが確認できた。このことは、イネの師管が示す防御反応に対抗するために本タンパク質が何らかの役割を果たしていることを示唆する結果と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、1)EF-ハンドタンパク質(NcSP84と呼称)がカルシウムイオンと結合することを示唆する結果を、非加熱条件でのSDS-PAGEで得ているが、Nativeなタンパク質では調べていない。よって、虫から精製したNativeなタンパク質を用いて、溶液中のカルシウム濃度を下げる機能を示すかどうかを調べる。ただし、通常のカルシウム測定キットでは検出感度が低すぎるので、Fura2などのカルシウム蛍光指示薬を用いた高感度検出法を開発する必要がある。 2)イネ茎葉切断面にNcSP84を処理することにより、師管液に存在する蔗糖を指標として師管液の漏洩の有無を調べることにより、師管閉塞抑制機能の可能性を検討する。 3)RNAi法等を用いてNcSP84遺伝子をノックダウンした虫にイネを与え、電気的吸汁行動装置を用いて、吸汁過程を記録することにより師管吸汁行動への影響を解析する。
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