2011 Fiscal Year Annual Research Report
スプライシング調節を応用したコンディショナル・トランスジェニック技術の開発研究
Project/Area Number |
22580101
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
笹川 昇 東海大学, 工学部, 准教授 (70302817)
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Keywords | スプライシング / RNA結合タンパク質 / エキソン / イントロン |
Research Abstract |
前年度に引き続き、本研究では線虫c.elegansをモデルとし、高等真核生物に広く見られる選択的スプライシングという生命現象を応用して、個体内での遺伝子発現パターンを人工的に調節し、任意の時期、部位で任意の遺伝子発現を可能にする実験系の開発を目的としている。 本研究の目的であるスプライシングの人工調節には、スプライシングを受ける遺伝子のエキソン_イントロン構造の詳細な機能解析と同時に、スプライジング調節に関わるRNA結合タンパク質の追究も重要な意味を持つ。従って、今年度は主としてこのスプライシング調節に関わるRNA結合タンパク質に着目し、研究を進めた。このRNA結合タンパク質は複数種のスプライシングアイソフォームを持ち、そのそれぞれが種々の場面で部位特異的、時期特異的に使い分けされていることが予想される。今回はこの遺伝子のゲノム構造を精査し、そのエキソン配列を特異的に標的とするRNAiコンストラクトを構築することで、この遺伝子をエキソン特異的にノックダウンするRNAi実験をおこなった。この実験において標的とするエキソン配列を厳選することで、ある特定のスプライシングアイソフォームをノックダウンさせることが可能になる。その結果として、ひとつの遺伝子から生じる個々のスプライシングアイソフォームの機能について詳細に追究する実験系の確立に成功した。 また、ノックダウンした線虫の表現型変化を指標として追究を行ったところ、実際にある特定のスプライシングアイソフォームが発現しても表現型変化は起こらない一方で、あるスプライシングアイソフォームをノックダウンさせると表現型変化が見られるという結果が得られた。これらの結果を通じ、このRNA結合タンパク質が標的とする遺伝子産物の機能に対する知見および、本来の目的である人工的なスプライシング調節の確立に向けて確かな手がかりが得られたものと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的である人工的なスプライシング調節の確立には、スプライシング調節を受ける側の遺伝子配列の解析と、スプライシングを司る側のRNA結合タンパク質の機能追究という両面からの研究が必要である。その両面において本研究は成果を出しつつあるものの、その両者が融合し、集大成に至るにはいま少しの時間とさらなる研究が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果を踏まえ、スプライシング調節を受ける側の遺伝子配列の解析と、スプライシングを司る側のRNA結合タンパク質の機能解析という両面からの追究をさらに進め、人工的なスプライシング調節を可能とするエキソン-イントロン構造を持つ遺伝子配列とその調節タンパク質の組合わせを見いだしていく。引き続き線虫c.elegansをモデルとし、上記遺伝子配列と調節タンパク質の組合わせで、線虫体内で人工的なスプライシング調節の結果を視認できる検出系を確立していく。
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