2011 Fiscal Year Annual Research Report
脂肪酸による骨格筋線維型変換機構:培養筋線維によるアプローチ
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22580136
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
水野谷 航 九州大学, 農学研究院, 助教 (20404056)
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Keywords | 骨格筋 / 筋線維タイプ / ラット / 脂肪酸 / PPARσ / ミオシン重鎖 / 単離筋線維 / 衛星細胞 |
Research Abstract |
本研究課題に先立ち、我々は魚油の摂取によりラット骨格筋の筋線維タイプは、遅筋タイプへ移行することを明らかにした。本研究課題では、この変化が「筋線維内に流入するn-3系脂肪酸が核内受容体PPARδリガンドとして作用して引き起こされた」のかをin vitroで明らかにするために、ラット単離筋線維培養系の確立を試みた。筋線維の単離培養法について、マウスのプロトコルが報告されているので(Wozniak and Anderson, 2005)、これに従った。前年度の時点で最も生存成績が良かったのは、ラット上腕三頭筋から分散させた筋線維で、培養6日目で48%の生存率を示した。今年度は、引き続き単離条件の検討を行った。単離操作に含まれる多くの実験条件の中でも、細胞を分散させるためのコラゲナーゼ処理条件と、筋組織の種類が生存率に大きく影響をすることが分かった。以上の点に注意して条件検討を重ねた結果、短趾屈筋(FDB)とWorthington社のCollagenase, Type 2を用いると、単離筋線維の生存率を培養7日目でも90%以上に維持できることが分かった。次にPPARδアゴニスト(GW501516)を単離筋線維に作用させ遅筋タイプに特徴的な因子のmRNA発現量を調べた。また各種脂肪酸のPPARδリガンド活性をレポーターアッセイから調べた。GW501516添加は、遅筋タイプで発現が多い遺伝子(リポプロテインリパーゼ、PDK4、UCP3)の発現量を増加させた。レポーターアッセイの結果、魚油に多く含まれるエイコサペンタエン酸(EPA)で高いPPARδリガンド活性が認められた。今後はEPA添加が単離筋線維の筋線維タイプに関わる遺伝子発現調節に及ぼす影響を調べていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
培養筋線維におけるPPARδアゴニストの影響を明らかにできたため。脂肪酸に関してはPPARδリガンド活性の高い種類の同定まで至っている。実績として報告する段階ではないが、ミオシン重鎖抗体作成および免疫染色の作業も進めているため。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り研究が進展しているため、大きな修正はない。これまでの検討で最もPPARδリガンド活性が大きかった脂肪酸であるエイコサペンタエン酸を中心に単離筋線維を用いたin vitroでの検討と、動物への投与実験を進めていく予定である。
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