2011 Fiscal Year Annual Research Report
フランスにおける育種研究の展開と遺伝資源の経済的活用に関する研究
Project/Area Number |
22580268
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Research Institution | Policy Research Institute, Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries |
Principal Investigator |
須田 文明 農林水産省農林水産政策研究所, 上席主任研究官 (70356327)
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Keywords | フランス / 地理的表示 / 遺伝資源 / 6次産業化 / 育種研究 / 味の景勝地制度 / テロワール / AOC |
Research Abstract |
フランスの南部のニヨンNyonsのオリーブを中心とした、地域振興について調査を実施した。このオリーブオイルはAOC(フランスの公的品質表示の一つ)およびPDO(欧州の公的表示の一つ)に認定されており、標準品の価格が1リットルあたり5.8ユーロであるのに対し、20.4ユーロとなっている。また、競争が激化しているとはいえ、同種のAOCオリーブオイルよりも、高価格で取引されている。 こうしたニヨンのオリーブオイルの成功は、ニヨンの持つ地域的な品質に由来することが示唆される。 というのも、ニヨンの農家民宿の宿泊料金が同じ県内の同一カテゴリの民宿に比して、最も高いからである。当該地帯のAOCヤギチーズ(ピコドンAOC)やワイン、ラベンダー派生品などといった地域に特徴的な産品がお互いの価値を相互に高めあっていると考えられる。こうした現象について、先行研究は「地域的品質のレント」と呼んで、いくつかの研究を蓄積してきた。 またこうしたニヨンのオリーブはフランスの「味の景勝地」の一つとして認定されており、地域の特徴的な産品とその地域的景観との相互作用が高い観光的価値を有することが認められているのである。地元の観光客はもちろんのこと、パリのみならず、北欧諸国からの観光客が多いのも特徴である。 このオリーブはタナン品種であり、オリーブ生産の北限での産地形成を可能とした。このように、遺伝資源の活用が地域の包括的な振興に一役買っている典型例を、ニヨンに見ることができよう。我が国の進める6次産業化施策の推進に際して、遺伝資源をいかに活用するか、興味深い事例をなしていると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
育種を中心としたクラスターでの聞き取り調査を計画しても、民間企業のデータなどについて資料収集が困難な場合に、しばしば遭遇しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
地域の遺伝資源や伝統的知識を活用した農産品の高付加価値化について、引き続き調査を行うとともに、これまで行ってきた調査及び文献での研究について、成果を取りまとめる。
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Research Products
(5 results)