Research Abstract |
移動現象論における基礎式である,連続の式,運動方程式,エネルギー方程式,対流拡散方程式を連立させ,これらを有限差分近似により離散化し,HSMAC(Highly Simplified Marker and Cell)法を用いて数値解析プログラムを作成し,ソーラーポンド内の速度,温度,塩濃度を求めた.この際,従来の簡便な解析手法とは異なり,気象条件を考慮したり,ソーラーポンド内の塩水溶液の物性値を温度と濃度の変数とするなど,可能な限り実現象に近い条件にて,シミュレーションを実施した.また,ソーラーポンドの基本性能を実験的にも検討するため,30cm(横)×30cm(縦)×10cm(高さ)のアクリル製立方体容器にて試験研究を実施した.実験と数値解析にあたっては,下半分に濃度10wt%の塩水を,上半分には純水をそれぞれ入れ,ソーラーポンド内部を移動現象論的観点から検討した.さらに実験にあたっては,下半分の塩水溶液が,上半分の純水と混ざらないよう,密度測定などを常に行って監視しながら実験を遂行した.検討の結果,実験結果と計算結果は,温度分布,濃度分布,そして温度の過渡応答に関して定性的に一致した.これらの成果は,学会1件(後出),ほか1件(平野博之ほか5名,"濃度勾配型ソーラーポンド内の二重拡散現象と太陽熱蓄熱",第15回岡山リサーチパーク研究・展示発表会要旨集,Aug. 31, 2010,テクノサポート岡山,p. 46.)にて発表を行った.次年度の課題として,計算の高速化と実験の高精度化が挙げられる.すなわち,今年度作成した計算プログラムは有限差分法に基づいたものであるが,多くの計算時間を要するため,高速化に向けてアルゴリズムの変更などを検討する必要がある.また,実験に関しては,蓄熱を最大限におこなうために,側面と底面からの熱損失を抑えるための断熱性能の向上を検討する必要がある.
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