2011 Fiscal Year Annual Research Report
マダニの飢餓耐性および原虫媒介に関するオートファジーの役割の分子・形態学的解明
Project/Area Number |
22580356
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
松尾 智英 鹿児島大学, 農学部, 准教授 (50383667)
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Keywords | マダニ / 飢餓耐性 / ベクター / 節足動物 / 寄生虫 / 原虫媒介 |
Research Abstract |
マダニは数年に及ぶ生活史の大半を未吸血・飢餓状態で過ごしうる、強靭な生命力を有する節足動物である。我々は、飢餓誘導性オートファジーに着目し、これがマダニの長期間の"飢餓耐性"を可能にしている一因であると仮説を立て、検証のための研究を遂行してきた。本研究では、3宿主性のマダニであるフタトゲチマダニ(単為生殖系統)を材料として、オートファジー関連(ATG)遺伝子の単離を試み、これまでにATG3、ATG4、ATG6、ATG8、ATG12の相同遺伝子を得た(HLATG3、HLATG4、HLATG6、HLATG8、HLATG12)。リアルタイムPCR法による遺伝子発現解析では、各HLATG遺伝子の発現は若ダニの未吸血期と変態期(飽血後10日目)において増大し、脱皮後の未吸血成ダニ(飽血後3ヵ月目)ではさらに増大することを明らかにしてきた。特に、HLATG8遺伝子発現は、すべての活動性発育期(幼・若・成ダニ期)の未吸血マダニにおいて高く、臓器別では、中腸において未吸血時に発現増大することが判明し、間接蛍光抗体法により、未吸血時の中腸上皮細胞質内にHIAtg8とHIAtg12タンパクの局在が認められ、オートファジー特有の膜構造体(隔離膜、オートファゴソーム、オートリソソーム)の存在が電子顕微鏡を用いた観察によって確認された。さらに、ウシ放牧地において、1)野外ピロプラズマ原虫感染個体をオートファジー研究の実験材料にする事を視野に入れた予備調査、(2)ピロプラズマ症発生地域における野外個体が実際にどの程度のピロプラズマ原虫保有率を示すのかの疫学的調査、(3)実験室において継代維持されてきたフタトゲチマダニ特有の単為生殖系統に加え、野外両性生殖系統個体とのオートファジーや媒介原虫の動態に関する比較検討、を目的とした野外調査を実施する予定であり、今年度の実施に向けて改めて準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本課題初年度に口蹄疫の発生があり、年に一度だけ発生ピークのあるフタトゲチマダニにおいては毎年行う予定であった野外調査が実施できなかったことにより、疫学的データの収集および野外個体を用いた実験成果が予定通り得られていない。
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Strategy for Future Research Activity |
原虫媒介に関する研究については、効率よくマダニ体内へ媒介原虫を導入するという課題がある。そのため、野外原虫保有マダニの採集は本課題にとって重要な位置づけとなる。そのため、予定より遅れてはいるものの、本年度から確実に実施する予定であり、野外個体の放牧地での発生およびピロプラズマ原虫保有率疫学的データの収集、オートファジーの原虫媒介への関与だけでなく、両性生殖個体におけるオートファジーの発現等を目的とした野外採集個体の本課題研究への供試、を中心に研究を進めていく予定である。
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Research Products
(6 results)