2011 Fiscal Year Annual Research Report
シクロオキシゲナーゼ阻害非依存的なインドメタシンの新たな作用機構の解明
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22590079
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
藤野 裕道 千葉大学, 大学院・薬学研究院, 准教授 (40401004)
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Keywords | インドメタシン / NSAID / COX阻害非依存作用 / FAT/CD36 / PPARγ / アラキドン酸 / 上皮間葉転換(EMT) / MMP-9 |
Research Abstract |
インドメタシンは広く用いられている非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の一つであり、そのシクロオキシゲナーゼ(COX)阻害作用により抗炎症作用を示す。その一方、COX阻害非依存的な作用を示す事も知られており、我々は平成22年度の研究において、インドメタシン処理によるアラキドン酸取り込み抑制機構を解明した。LS174Tヒト結腸癌細胞を用いて明らかとなったこれら作用は、使用したNSAIDや脂肪酸ではインドメタシンに特異的であり、アラキドン酸への選択性が高い事が明らかとなった。アラキドン酸は、プロスタグランジンE_2(PGE_2)を含む炎症性メディエーターであるエイコサノイドの主要な基質であることから、COX阻害作用に加えて、COX阻害非依存的な作用機序による新たな抗炎症・抗癌作用を、ヒト結腸癌細胞においてインドメタシンは有している可能性を示唆した。また平成23年度の研究の中で、インドメタシンの新たなCOX阻害非依存的な作用としてPGE2受容体サブタイプの一つであるヒトEP2受容体のアンタゴニスト様の作用の存在も明らかとした。すなわちLS174T細胞において、インドメタシンをPGE_2と同時に作用させる事で、刺激後少なくとも5分以内からPGE_2刺激によるcyclic AMP抑制、および[^3H]PGE2のLS174T細胞上への競合的受容体結合抑制が引き起こされる事を明らかとした。さらに、ヒト肺癌細胞株A549細胞においては、インドメタシンは、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体γ/matrix metall oproteinase-9を介した上皮-間葉転換(EMT)を誘発することを明らかとした。興味深い事にA549肺癌細胞は、LS174T結腸癌細胞とは異なり、EMTを介した癌の転移による悪性化を、インドメタシンが誘発する可能性を示唆する結果となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最初に設定した研究目標の3つの系のうちの2つ、A:インドメタシンによるアラキドン酸の細胞内取り込み抑制はどういったメカニズムなのか?B:Aで得られた特異性の問題について;1)飽和脂肪酸では見られず、不飽和度の高いアラキドン酸に選択性が強い事;2)アスピリンやスリンダック、ジクロフェナックでは起こらなかった事などを明らかにした。また、インドメタシンの新たな作用として、ヒトEP2受容体へのアンタゴニスト様作用も見いだした。さらに、A549ヒト肺癌細胞において、インドメタシンは癌の悪性化を亢進する可能性がある事を明らかにし、3つの査読のある国際論文に掲載する事ができたことから(2)のおおむね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の成果から、結腸癌細胞株と肺癌細胞株とでは、インドメタシンによる効果に違いがある事が明らかとなった。そのため本年度では、ヒト肝癌細胞株HepG2細胞などにおけるインドメタシンの効果なども検討して行きたいと考えている。また研究目標の最後の系である、アラキドン酸取り込み抑制とメタボリックシンドローム軽減との関連性についても検討して行きたいと考えている。具体的には、分化誘導前のマウス脂肪細胞株3T3-L1細胞にインドメタシン処理する事で、アラキドン酸の取り込み量に変化があるのか、あるとすればそれは分化誘導刺激に対してどういった効果を現すのかなどをOil Red Oを用いたトリグリセリドの染色などにより検討したいと考えている。
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Research Products
(5 results)