2011 Fiscal Year Annual Research Report
脳アストロサイトのカリウム緩衝機能に着目したてんかん病態研究
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22590092
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Research Institution | Osaka University of Pharmaceutical Sciences |
Principal Investigator |
大野 行弘 大阪薬科大学, 薬学部, 教授 (00432534)
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Keywords | てんかん / アストロサイト / 内向き整流性カリウムチャネル / カリウム緩衝機構 / 疾患モデル / 強直-間代発作 / 欠神発作 / 抗てんかん薬 |
Research Abstract |
本年度の課題は、1)強直-間代発作モデルNERラットにおける病態研究、2)Pilocarpine側頭葉てんかんモデルにおける病態研究、3)アストロサイトKir4.1チャネル発現に対する抗てんかん薬の作用評価、4)新規てんかんモデルの開発であり、以下の結果を得た。1)NERラットの後頭-側頭葉部においてアストロサイトに発現するKir4-1チャネルの発現が低下していることを示してきた。今回さらに、これら脳領域におけるGFAP陽性アストロサイト数およびNeuN陽性神経細胞数を免疫組織化学的に解析し、NERラットにおけるKir4.1チャネルの発現低下がアストロサイト数の変化を伴わず、神経細胞数にも差がないことを確認した。2)Pilocarpineの投与によりラットにけいれん重積発作を惹起させ、その回復後2~3ヶ月で自発性けいれんを発症する側頭葉てんかんモデルを作成した。次に、これら動物の大脳皮質、海馬、線条体、視床、視床下部、中脳、橋・延髄、小脳におけるKirチャネルの発現量をWestern blot法により解析した。その結果、側頭葉てんかん病態では、大脳皮質、線条体、視床下部においてKir4,1チャネルが特異的に発現上昇することが示された。さらに、免疫組織化学的解析から、後頭-側頭葉の広い領域でKir4.1陽性アストロサイト数が上昇しており、特に、この変化は扁桃核において顕著であった。3)代表的な抗てんかん薬のバルプロ酸Naおよびフェノバルビタールをラットに10日間反復投与し、後頭一側頭葉切片におけるアストロサイトKir4.1チャネル発現を免疫組織化学的に検討した。その結果、両薬物は扁桃核におけるKir4.1チャネル発現を有意に上昇した。4)電位依存性Na^+チャネルのミスセンス変異ラットの薬理評価を行い、これが新たなヒト熱性てんかんモデルとして有用であることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた1)全般性強直・間代発作モデル、2)全般性欠神発作モデル、3)側頭葉てんかん(部分発作)モデル、4)Pentylenetetrazoleキンドリングモデルの4病態モデルのうち、1)~3)の病態解析をほぼ終了することができた。また、新たな進展として、既存の抗てんかん薬がアストロサイトKiT4.1発現を上昇することを見い出し、てんかん発作の発症、防御に関する内因性因子としてのみでなく、抗てんかん薬の薬理作用発現にもKir4.1チャネルが寄与している可能性が示唆されつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
・病態研究を継続推進し、最終年度に、種々のてんかん(全般発作、部分発作、けいれん性発作、非けいれん性発作など)病態におけるアストロサイトKir4.1チャネルの変動解析結果を総括し、てんかん発作の発症、防御におけるKir4.1チャネルの機能意義をまとめる。(本研究期間内にて実施) ・将来的な研究展開としては、Kir4.1チャネル発現に対する抗てんかん薬の作用評価について、検討をさらに推進する(細胞・分子レベルでの解析)。また、カリウム緩衝機構とグルタミン酸輸送との関連などに着目し、アストロサイトKir4.1の発現変動に伴う脳内現象をさらに詳細に解析する。 上記の検討をもとに、てんかん治療標的分子としてのKir4.1チャネルの機能を見極め、創薬研究への応用を図る。
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