2012 Fiscal Year Annual Research Report
亜鉛の殺細胞作用とDNAメチル化阻害による抗がん機構
Project/Area Number |
22590126
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Research Institution | Hiroshima International University |
Principal Investigator |
瀧口 益史 広島国際大学, 薬学部, 准教授 (90330753)
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Project Period (FY) |
2010-10-20 – 2014-03-31
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Keywords | 亜鉛 / がん悪性化 / 抗がん / MMP / メタロチオネイン / マイクロアレー |
Research Abstract |
【目的】当研究室では、ラット培養細胞へ長期間(10週間以上)カドミウム(Cd)投与すると、細胞の形態学的変化が起こり、その細胞より抽出したDNAではメチル化異常が起こっていた。これらの結果はCdによる発がんメカニズムにDNAのメチル化異常が関係していることを示唆するものと考えられる。そこで今回の研究では、形態転換した細胞より抽出したRNAとコントロールのRNAを用いて、cDNA microarray法によりCdの標的遺伝子を同定することを目的に検討を行った。 【方法】細胞:ラット肝臓培養細胞(TRL1215)を用いた。細胞に2.5μM塩化Cdを10週間曝露後、無Cd培養液で4週間培養した。細胞回収後、総RNAを抽出しマイクロアレー用試料とした。マイクロアレー:NCBI(National Center for Biotechnology Information)に公表されているラットの塩基配列のうち、3,779種選択しオリゴDNAプローブ配列を設計した(1遺伝子につき1プローブ)。 設計したプローブ配列をCombi Matrix社製のB3-マイクロアレー作製機に入力して、ラットマイクロアレーを作製した。 【結果および考察】各曝露Rat Culture Cellに対するDNAマイクロアレー解析では、発現変動が統計学的に有意であり、さらにコントロールの発現量に対する曝露群の発現量の比(EXP/CTL)が2倍以上または1/2以下という基準により、発現変動遺伝子を検出した。その結果、2.5µM Cd曝露により、76種類の遺伝子に有意な発現変動がみられた。そのうち、Nrf2によって遺伝子発現が調節されている解毒酵素(NQO1, GSTp1, HO1)の遺伝子発現量は、 Cd曝露によって有意に増加していた。その他、細胞周期、がん遺伝子、がん抑制遺伝子の発現に有意な差がみられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(理由) 追加採用(平成22年10月)だったため、研究開始が遅れた。さらに、研究室の人事(教授退職など)により、研究に割ける時間が減った。また、亜鉛により細胞の形質転換が上手くいかず、研究に遅れが出た。
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Strategy for Future Research Activity |
研究開始が遅れた分を取り返すため、卒業研究生(薬学部4年、5年)を当初の計画より2名程増員し研究に当たる。また、マイクロアレー実験や遺伝子発現実験などを外注にして、実験の効率化を図る。細胞の形質転換が成功しているカドミウムを用いて、研究を進め。得られた知見を亜鉛に応用することで回り道ではあるが、亜鉛研究を進展させる。
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