2011 Fiscal Year Annual Research Report
黄色ブドウ球菌感染症の新規治療法開発をめざした病原性因子の複合的機能解析
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22590402
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
馬場 理 順天堂大学, 医学研究科, 准教授 (30317458)
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Keywords | 黄色ブドウ球菌 / 病原性 / ケラチノサイト / 病原性アイランド / 細胞毒性 / 免疫細胞 / 宿主特異性 |
Research Abstract |
23年度の研究計画では、「前年度に得られた欠失変異株シリーズを、野生株と対比させてヒト血球細胞に作用させ、細胞致死性や接着性の定量解析、サイトカイン産生性や、食細胞による貧食脳などを評価する。また、ヒト培養細胞系(皮膚細胞・免疫細胞など)に、これらの変異株を作用させ、形態の変化や、サイトカイン産生性を観察する。これらの実験により、ある症状をもたらす病原性遺伝子の組み合わせを考察する」とした。 当該計画に基づき研究を遂行した結果、欠損変異株のうち、黄色ブドウ球菌に特異的で、ヒトへの病原性に深く関わると考えられたゲノムアイランドγSaα、γSaβを欠失したものは、ヒト血管内皮細胞・皮膚角化細胞・骨芽細胞・肺胞上皮細胞などに対する細胞毒性は野生株と比較して変化が無かったものの、免疫系細胞に対してのみ、細胞毒性が減じたり、逆に増加したりしていたことが判明した。一方では、ヒト角化細胞に対する毒性に大きく影響する遺伝子領域を新たに見いだしたりすることができた。 上記のことから、黄色ブドウ球菌の病原性とは、主にヒト免疫系撹乱(異常亢進或いは抑制)によってもたらされるのではないかとの知見を得た一方、組織特異的に働く特定の病原性因子が、病原性の上昇に関与していることも併せて示唆された。また、黄色ブドウ球菌に対するヒト免疫系の応答も、ヒトの個体によって異なることを示唆するデータも得られており、以上を併せて論文を執筆中であり、当該成果は今年度中に開催される学会で発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述の通り、目的とする研究成果がほぼ得られた上、新たな病原性因子の発見を示唆する結果も得ている。一方では、その解釈を巡る考察を行い、それを補強する新たなデータを得なければならないという課題もあり、引き続き論文による報告に注力しなければならない。全体として、順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
黄色ブドウ球菌の特定遺伝子欠損変異株に対するヒト免疫細胞の応答性の違いは、ヒトに対する病原性の程度が何に依存するのか、という問題や、そもそもなぜ黄色ブドウ球菌が3割ほどのヒトにしか常在していないかという疑問に答える鍵になると考えられるため、引き続き当初計画に基づき研究を遂行する。同菌の遺伝的背景の差が、ヒトの免疫系相違に対してどのように応答するのかを考察する為、免疫細胞を提供するボランティアをさらに募る必要がある。この際、施設の倫理委員会を経る必要があるのか否かについても慎重に検討してゆきたい。
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