2010 Fiscal Year Annual Research Report
可視化によるインフルエンザウイルス出芽過程の動的解析
Project/Area Number |
22590420
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
黒田 和道 日本大学, 医学部, 准教授 (50215109)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
芝田 敏克 日本大学, 医学部, 研究員 (30398854)
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Keywords | インフルエンザウイルス / 出芽過程 / テトラシステインタグ |
Research Abstract |
2波長全反射顕微鏡観察を可能とするための調整を行い、23年度よりの観察が可能となった。特に、対物ピエゾの導入により、生細胞タイムラプス観察中での焦点ずれの問題を解決できる目処がついた。 全反射顕微鏡観察の予備実験として、固定細胞を用いた各インフルエンザウイルスタンパク質抗体による蛍光免疫染色試料について、共焦点顕微鏡観察により以下の観察結果を得た。 (1)ウイルス膜タンパク質であるHAは、インフルエンザウイルス感染後期の細胞上で明瞭な粒子像を示し、出芽に対応する構造と考えられた。 (2)ヌクレオキャプシドタンパク質(NP)は、細胞質内で顆粒構造を示したが、HA顆粒とは一致しなかった。一方、細胞内での小胞輸送に関与するRabllに対する抗体染色で見られる顆粒とは一致した。ただし、細胞膜極近傍においては、Rabllと一致しないNP顆粒も観察された。 (3)ウイルスマトリックスタンパク質(Ml)は、免疫染色では細胞膜近傍で顆粒構造を示さず、HAとの一致は見られなかった。ところが、テトラシステインタグ(蛍光色素であるFIAsHを共有結合により導入できる蛍光タグ)導入M1を発現する組み換え体(FlAsH-M1)ウイルスを感染した細胞でのFlAsH蛍光像はHA顆粒と一致した。 以上の観察結果を、以下のように解釈している。HAで観察される顆粒が出芽に対応するならば、NPとM1が一致しないということはあり得ない。恐らく、出芽部位では抗NPあるいは抗M1抗体が浸透し得ない構造が形成されていると考えている。このことは、FlAsH染色の結果が支持する。NPの顆粒は細胞内を輸送されるRNP(ribonucleoprotein)複合体と考えられるが、個々のRNPでなく集積体であろう。細胞膜近傍でこの複合体が解離し、出芽場所へと運ばれるのであろう。抗体を用いないNP検出を可能とする系の構築を現在検討中であり、FIAsH-M1ウイルスと組み合わせることで、インフルエンザウイルス出芽過程に関する新たな情報が得られることが期待される。
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Research Products
(2 results)