2011 Fiscal Year Annual Research Report
食道扁平上皮癌特異的マイクロRNAの血中同定と臨床診断への応用
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22590685
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
磯本 一 長崎大学, 大学病院, 准教授 (90322304)
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Keywords | マイクロRNA / 食道扁平上皮癌 / 内視鏡的粘膜下層剥離術 / 逆流性食道炎 / アカラシア / パピローマウイルス / エキソソーム / バレット食道・腺癌 |
Research Abstract |
マイクロRNAを用いた食道扁平上皮癌診断に当たっては、逆流性食道炎(胃食道逆流症)・食道良性腫瘍(平滑筋腫など)のマイクロRNA発現パターンを解析する目的がある。食道扁平上皮癌特異的マイクロRNA候補である、マイクロRNA-1246、マイクロRNA-1290、マイクロRNA-196a、マイクロRNA-196b、マイクロRNA-1914、マイクロRNA-424、マイクロRNA-130b、マイクロRNA-7、マイクロRNA-455-3p、マイクロRNA-203の中で、食道炎をモデルケースとした場合、罹患粘膜ではマイクロRNA-7、マイクロRNA-203はそれぞれ相対比5.5倍、0.36倍で発現変動がみられた。食道扁平上皮癌の非腫瘍部背景粘膜のマイクロRNA発現に、リスクファクターとされる喫煙・飲酒・ヒトパピローマウイルス・アカラシア(による食道貯留内容物による慢性刺激)などの因子が影響する可能性がある。喫煙、飲酒、ヒトパピローマウイルス(PCR)による検討では、有意差が認められなかった。アカラシア患者の食道サンプルを20例集積した(RNAを抽出、上述の食道扁平上皮癌特異的マイクロRNAのreal-time PCR)。食道扁平上皮癌とバレット食道腺癌における血中・腫瘍組織中での発現レベルを対比する必要性があるが、バレット食道腺癌は本邦では稀少であり、内視鏡的粘膜下層剥離術を用いてサンプルを集積している(23年度まで10例)。マイクロRN食道扁平上皮癌特異的なマイクロRNAの血液サンプルを用いた診断応用にあたって、腫瘍から血中に分泌されるエキソソームに着目した。超遠心分離法によってエキソソーム由来マイクロRNAの分離の技法が安定しないために他法(スピンカラムを使用した精製法や抗体結合磁気ビーズ法)を試みていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
食道扁平上皮癌組織のマイクロRNA発現と臨床病理学的因子の関連性を明らかにするために、多段階に食道癌が発癌する過程においてマイクロRNAが果たす役割を解析する。すなわち、炎症性変化から、低・高度異形成(前癌病変)、上皮内癌、早期癌、進行癌の各段階において、マイクロRNAの発現強度や発現様式と臨床病理学的因子(分化度、深達度、浸潤様式、脈管侵襲、リンパ節・遠隔転移)や予後との関連性を評価する。しかしながら、異形成~上皮内癌~早期癌のサンプルが十分でなく、内視鏡下粘膜下層剥離術を用いて切除標本、施行時の血液サンプルを集積して、臨床病理databaseを構築した。
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Strategy for Future Research Activity |
集積した切除標本・血液サンプルを用いて、異形成、上皮内癌、早期癌、進行癌の各段階において、食道扁平上皮癌特異的マイクロRNAの発現強度(real-time PCR)や発現様式と分化度、深達度、浸潤様式、脈管侵襲、リンパ節・遠隔転移や予後との関連性を評価する。食道扁平上皮癌特異的マイクロRNAの標的分子の発現の関連性、すなわち、その蛋白発現の制御との関連性を調べる。特異的マイクロRNAの前駆体或いはアンチセンスオリゴを導入し、細胞増殖・アポトーシス・浸潤遊走能との関与を調べる。食道扁平上皮癌特異的マイクロRNAの発現制御機構として、DNAメチル化、遺伝子不安定性との関与を中心に解析したい。
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