2010 Fiscal Year Annual Research Report
DNA障害の修復機構をマーカーとした新しいインターフェロン治療の開発
Project/Area Number |
22590722
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
大越 章吾 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (70231199)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松田 康伸 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (40334669)
山際 訓 新潟大学, 医歯学系, 助教 (10419327)
矢野 雅彦 新潟大学, 医歯学総合病院, 医員 (70529693)
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Keywords | 肝細胞癌 / ウイルス発癌 / インターフェロン / DNA修復機構 / HBx遺伝子 / ATM / p21 / トランスジェニックマウス |
Research Abstract |
本研究は、臨床使用されているインターフェロン(IFN)のなかで、肝癌を最も強く予防できる可能性が明らかになってきたIFNβ(ベータ)の発癌防御機構を解析し、実効性の高い予防医療を確立することを目的とする。我々は高肝発癌モデルであるHBx遺伝子トランスジェニックマウス(HBx-Tg)を用いた解析で,インターフェロン(IFN)-βは細胞増殖やDNA合成を抑制することで,HBx誘導性肝発癌を制御することを示した(J Hepatol.2008).さらに,Microarray解析の結果,HBx-Tgで有意に増強していたcyclin-dependent kinase(CDK)inhibitor(p21)mRNA発現が,IFN-β投与によって減少することが判明した.つまり,p21はHBxの肝発癌機構において重要な役割を担う分子であると示唆されたが,分子学的意義については不明であったため、in vivoとvitroの両面から,HBx肝発癌およびそれに対するIFN-βの制御機構について解析した.その結果、HBx-Tgでp53非依存的にp21発現増強が認められ,一方IFN-β投与HBx-Tgではp21の減衰が確認された.また,cyclin DおよびCDKなどの細胞増殖因子がHBx-Tgで微増し,さらにprotein kinase C(PKC)の活性化も認められた。この様な細胞増殖を促すと考えられる分子動態は,IFN-β処理によって抑止されることが確認された.また、DNA障害の修復機構に関与するATMのシグナル伝達機構がHBxによって障害され、IFN-βによって改善した.このようにHBxによってもたらされる肝細胞内でのp21、ATM発現異常が,最終的に発癌へ導くと考えられた.IFN-βは,この様な分子機構の抑制によって発癌を抑えることが示唆され,臨床応用の面でその抑制修飾は肝発癌に対するより強力な制御療法となり得ると考えられた.
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