2010 Fiscal Year Annual Research Report
カロリー制限によるミトコンドリア機能制御機構の解明
Project/Area Number |
22590814
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
新村 健 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (70206332)
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Keywords | カロリー制限 / 老化 / ストレス / シグナル伝達 / 心筋虚血 / ミトコンドリア / 電子伝達系 / 脱アセチル化 |
Research Abstract |
抗老化療法、カロリー制限(CR)は、様々な心血管保護効果を有する。ミトコンドリアはCR効果発現における標的細胞器官と推測されるが、どのような機序によりCRがミトコンドリア機能を制御しているかは明らかではない。近年長寿遺伝子SIR2とそのhomologue、sirtuinがCR効果発現において重要な役割を担うことが報告された。多くのsirtuinはNAD^+依存性に標的蛋白を脱アセチル化し細胞機能を修飾する。そこで我々は、CRに伴うミトコンドリア蛋白の脱アセチル化の程度を質的proteomics法により解析し、CRによる虚血心保護効果の機序解明を試みた。 食餌自由摂取下で飼育(AL)または-35%のCRを6ヶ月間施行した12ヶ月齢雄性Fischer344ラットを用いた。心臓よりミトコンドリア分画を抽出しミトコンドリア機能を解析し、Ettan DIGE法を用いて総蛋白量、アセチル化蛋白の発現変化を比較した。 Baselineでは両群間でミトコンドリア機能に差は見られなかった。虚血再灌流後の心臓から抽出したミトコンドリアにおいてCR群でミトコンドリア呼吸が良好に保たれ、活性酸素種(ROS)産出も軽減した。CRにより6種類のミトコンドリア蛋白発現が変化し、10種類の蛋白でアセチル化の程度が変化した。特に電子伝達系複合体I構成蛋白NDUFS1と複合体III構成蛋白cytochrome bcl complex Rieske subunitがCR心で顕著に脱アセチル化されていた。培養心筋細胞において低濃度resveratrolはNDUFS1とRieske subunitをNAD^+依存的に脱アセチル化し、低酸素再酸素化によるROS産出と細胞死を抑制した。 以上よりCRは特定の電子伝達系蛋白脱アセチル化修飾を介して虚血再灌流時のROS産出を軽減することにより、虚血心保護効果を呈するものと考察された。
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