2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22591046
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
鈴木 隆浩 自治医科大学, 医学部, 講師 (40345210)
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Keywords | 癌 / シグナル伝達 / Cbl / 細胞骨格 / 骨髄異形成症候群 |
Research Abstract |
本年度は造血系細胞におけるCblの細胞骨格制御について検討を行った。 その結果、Cblノックアウト(KO)マウス由来の線維芽細胞では、フィブロネクチン接着後のアクチン細胞骨格線維の再構成能が低下しており、また未分化造血細胞では骨髄へのホーミング能が有意に低下していることが明らかとなった。また、Cbl KO血液細胞はフィブロネクチンやSDF-1などのケモカインに対する遊走能が有意に低下しており、これがホーミングの低下に関係していると予想された。 血液細胞の骨髄ホーミングには低分子量G蛋白であるRhoファミリー分子(Rho, Rac, Cdc42)の機能が重要で有ることが知られているため、血液細胞におけるこれらのG蛋白活性を測定したところCbl KO細胞ではRac活性が有意に低下していることが明らかとなった。KO細胞に認められた細胞骨格制御能(ホーミング能)は活性型Racを導入することで回復することが判明したため、造血細胞はCbl-Racとつながるシグナル伝達系によって細胞骨格再構成能および骨髄ホーミング能が制御されていると考えられた。 Cblについては、これまで腫瘍化との関連で数多くの研究結果が報告されており、これらはCblのユビキチン化能の障害およびチロシンキナーゼの制御障害と関係して述べられることが多かったが、今回私が明らかにした知見は、Cblが細胞骨格の制御にも関わっていることを示しており、極めて意義深い発見と考えている。細胞骨格制御の破綻は腫瘍化にも関わるため、今後は腫瘍化と細胞骨格制御およびCblからRacに至るシグナル経路について分子生物学的に解析を加えていきたい。
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