2010 Fiscal Year Annual Research Report
11q23転座型ALLと、それを維持する骨髄微小環境の生物学的特性と機序の解明
Project/Area Number |
22591153
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
古市 嘉行 山梨大学, 大学院・医学工学総合研究部, 医学研究員 (20467137)
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Keywords | 11q23転座型ALL / 微少残存病変(MRD) / FLT3/FLシステム / TGF-beta1 / 骨髄ストローマ細胞 |
Research Abstract |
本研究は難治性である11q23転座型急性リンパ性白血病(11q23転座型ALL)が抗がん剤に対しアポトーシス抵抗性を獲得し、微少残存病変(minimal residual disease,MRD)を形成する過程に関与していると考えられるFLT3/FLシステムの、分子レベルでのメカニズムの解明と、MRDの形成に関わる他の分子間相互作用を探索することにより、11q23転座型ALLの治療成績の改善をめざすものである。 我々は、FLT3を高発現している11q23転座型ALL細胞にFLIT3-ligand(FL)を添加すると、p27の発現増強とSTAT5の脱リン酸化を伴って、抗がん剤抵抗性のGl期停止が誘導されることを見出し、FLを高発現する骨髄ストローマに接着した細胞はFLT3/FL-interactionを介して抗がん剤抵抗性の休眠態に誘導され、MRDが形成・持される可能性を報告した(Cancer Res,2007)。また、FL刺激により増殖が強く抑制される11q23転座型細胞株を用い、DNAアレイでFL添加により発現が増加する遺伝子としてTGF-beta1,EGR1等を見出した。そこで平成22年度は 1、1123転座型ALL、細胞株におけるTGF beta1の生物学的特性を検討した。結果、骨髄ストローマ細胞が発現・分泌するFLは、骨髄ストローマ細胞や11q23転座型ALL細胞自身が産生するTGF-beta1と協調的に作用し、11q23転座型ALL細胞に細胞回転停止と抗がん剤AraCに対するアポトーシス抵抗性を誘導することを見出した。更に 2、骨髄ストローマ細胞由来液性因子よる11q23転座型ALL細胞の薬剤耐性誘導をtranswellを用いた実験系で検討した。結果、11q23転座型ALL細胞株KOCL-58は骨髄ストローマ細胞KM104とtranswellで共培養することにより、細胞増殖が亢進し、抗がん剤AraCに対しアポトーシス抵抗性となることを見出した。しかし共培養(transwell)により誘導されたAraC抵抗性は、抗FL中和抗体、TGF-beta1受容体キナーゼ阻害剤の添加により減弱されなかった。以上より、11q23転座型ALL細胞は骨髄ストローマ細胞との接着により休眠状態に誘導されアポトーシス抵抗性を獲得する一方で、非接触MLL+ALL細胞は骨髄ストローマ細胞由来液性因子により増殖の促進とアポトーシス抵抗性を獲得する可能性が示唆された。
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