2011 Fiscal Year Annual Research Report
潰瘍性大腸炎術後の回腸嚢炎の発症経過と機序の解明-回腸嚢炎は術後再発か?-
Project/Area Number |
22591476
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小川 仁 東北大学, 大学院・医学系研究科, 非常勤講師 (00312570)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 巌 東北大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (60125557)
柴田 近 東北大学, 大学院・医学系研究科, 准教授 (30270804)
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Keywords | 潰瘍性大腸炎 / 回腸嚢炎 / 発症機序 |
Research Abstract |
本研究の目的は(1)潰瘍性大腸炎に対する大腸全摘・回腸嚢肛門吻合術後患者に発症する回腸嚢炎の発症経過と機序を、臨床検体および動物モデルを用いて明らかにすること、および(2)「回腸嚢炎は、術後の回腸嚢に起こる潰瘍性大腸炎の再燃である」とする仮説に基づき、潰瘍性大腸炎の病因解明につなげること、である。平成23年度は潰瘍性大腸炎に対して大腸全摘・回腸嚢肛門吻合術後に回腸嚢炎を発症した64名の発症後臨床経過の詳細を検討し、その結果は専門誌(Disease of the Colon and Rectum;2012年3月号)に掲載された。また回腸嚢粘膜の変化を経時的に観察し、ストマ閉鎖手術後数ヶ月で回腸嚢の血管透過性が大腸のそれと近くなってゆくことを観察した。一方、ラットを用いて回腸を結腸の間に間置するモデル(回腸間置モデル)による検討を試みたが、術後のラットの多くが死亡してしまい、未だに動物モデルとして確立できていない状況である。そこで、近年発見された新しいサイトカインであるIL-23の、腸管粘膜免疫における働きの基礎的検討を同時に行った。IL-23レセプターがヒト腸管上皮中の神経内分泌細胞に発現していること、神経内分泌腫瘍や大腸癌の一部にも発現していること、さらに腫瘍の増殖や浸潤に関与していることを発見し、専門誌(Oncology letters)に投稿し採択された(in press)。またIL-23刺激により神経内分泌細胞由来の培養細胞KRJ-IにおけるIL-23R,IL-13,SOCS3の発現が亢進することを発見し、そのメカニズムにSTAT3が関与していることを発見、現在投稿準備中である。(702文字)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
潰瘍性大腸炎患者に対する回腸嚢肛門吻合術後に発症する回腸嚢炎には、発症後の長期経過に不明な点が多くあった。平成23年度の研究ではこの点について検討し、その結果は専門誌Disease of the Colon and Rectumに掲載された。一方、動物モデルを用いた基礎的検討は未だ結果を得るに至っていない。しかし同時に行ったIL-23の腸管粘膜における作用の基礎的検討により多くの発見が得られ、その結果の一部は専門誌(Oncology letters)に採択され(in press)、さらに他の専門誌にも近日中に投稿する予定である。当初の目的とはやや異なる成果も含まれるが、おおむね順調な進展をみていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は臨床における回腸嚢粘膜の経時的変化を、さらに症例数を増やす事によって検討する。また回腸間置モデルを、間置する回腸の長さ、部位等を工夫し、さらに手術手技と術後管理に習熟することによって確立する方針である。一方で当初の研究計画にはなかったが、これまでにある程度の結果が得られているIL-23の腸管粘膜免疫機構、特に上皮細胞中の神経内分泌細胞に対する作用とそのメカニズムの詳細について、さらに研究を進める予定である。
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Research Products
(4 results)