2011 Fiscal Year Annual Research Report
動物モデルを使った尿路病原性大腸菌のキノロン耐性誘導機序の解明
Project/Area Number |
22591803
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Research Institution | Hyogo Medical University |
Principal Investigator |
山本 新吾 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (80322741)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
倉園 久生 帯広畜産大学, 畜産学部, 教授 (90186487)
野島 道生 兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (90237842)
兼松 明弘 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (90437202)
樋口 喜英 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (20411994)
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Keywords | 尿路病原性大腸菌 / キノロン耐性 / QRDR変異 |
Research Abstract |
本研究の前提は、臨床由来キノロン耐性菌株と感受性菌株の間で保有病原因子、系統分類、usp subtypeの分布に違いが認められたことから、キノロン耐性獲得しやすい菌株群が存在する、という仮説に基づいている。そこで、本研究では様々なキノロン感受性尿路病原性大腸菌株を使用してどのような条件下でキノロン耐性が誘導されるのか、についての詳細な解析を推進している。 平成22年度においてキノロン感受性89株を低濃度~高濃度キノロン含有液体培地によって培養したところ、18株(20.2%)が、継代培養することなくMIC 4μg/ml以上の高濃度LVFX培地で育成した。これら高濃度LVFX培地で育成した株は 1)sfa、hly、ibeA、uspなどの病原因子の保有率が低い、2)系統分類D群が多い、などの臨床由来のキノロン耐性菌株群と同様の分布が認められ、この結果は上記の我々の仮説を裏付けるものであった。しかし、平成23年度においてこれらの高濃度LVFX培地で育成した菌株についてQRDRシークエンスを確認したところ、いずれの菌株においても新たな変異を認めなかった。そのため、この現象はQRDR変異の誘導によって起こったものではなく、排出ポンプ機構を強発現するなどの他の機序によって、高濃度LVFXの環境で育成した可能性が高い、と考えられた。 そこで、平成24年度においては、1)本来の目的であるQRDR変異による高度キノロン耐性誘導を目的として、再度低濃度~中濃度LVFX含有液体培地にて複数回培養することにより、2 step theoryとしてのキノロン耐性誘導に至適なMSW濃度を決定する 2)薬剤耐性の機序のひとつである排出ポンプ機構に着目し、こららの菌株におけるmarA,yhiU,yhiV,mdfAなどの遺伝子発現をreal time PCRを使って確認する。以上の実験系を予定する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
高濃度 LVFX 培地で育成させた後にも QRDR 変異の誘導は認められなかったため、従来の目的である QRDR 変異によりキノロン耐性獲得する実験系が構築できていない。しかし、この現象は排出ポンプ機構を強発現するなどの他の機序によって高濃度 LVFX の環境で育成した可能性が高く、さらに実験を進めることで従来の仮説と違ったあらたな知見が得られる可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
以上の結果をふまえ、平成24年度には、1)従来の目的である継代培養によるQRDR遺伝子変異の誘導によるキノロン耐性の獲得システムの構築 2)高濃度キノロン下におけるreal time PCRによる排出ポンプ遺伝子の発現解析、の2つの実験系を主軸に遂行する予定である。現在、1)2)の実験系とも順調に進んでおり、それぞれ、従来仮説である2ステップセオリーの証明、新たなキノロン耐性獲得セオリーの提言、につながる。
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