2011 Fiscal Year Annual Research Report
ケラチン12ー蛍光タンパク質レポーターを用いた角膜上皮細胞への運命決定機構の解析
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22591966
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
吉田 悟 慶應義塾大学, 医学部, 特任助教(非常勤) (50398781)
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Keywords | 角膜上皮 / ケラチン12 / 幹細胞 |
Research Abstract |
本研究では、(1)マウス角膜上皮細胞由来の細胞株に、K12遺伝子発現制御下で発現する蛍光レポーター遺伝子を組み込んだ細胞株を作製し、これを用いて(2)角膜輪部線維芽細胞にK12-PAX6陽性角膜上皮細胞へと分化誘導する活性があることを確認し(3)胚発生期のK12の発現が始まる前後のマウス水晶体あるいは角膜実質に、K12-PAX6陽性角膜上皮細胞へと分化誘導する活性があることを明らかにすることを目的としている。今年度はまず、既報に基づきヒト角膜輪部線維芽細胞の培養上清に、角膜上皮細胞への分化誘導活性があるかどうかを確認する実験を行った.しかし、論文にあるような分化誘導活性を確認するには至らなかった.次に、マウスES細胞およびiPS細胞を用いてSDIA法による角膜上皮誘導を検討した結果、誘導された一部の上皮細胞にケラチン12の発現を認められた.誘導・分離した上皮細胞は培養過程でケラチン12の発現を失っていた.これをマウス角膜実質上で培養したところ、角膜実質上での重層化を認められたが、ケラチン12の発現の回復は認められなかった.SDIA法により誘導・分離した上皮細胞から重層上皮シートを作成することにも成功したが、重層上皮シート内でも同様にケラチン12の発現を認めることができなかった.これとは別に、ヒト輪部角膜上皮細胞を用いた検討から、FGFファミリーに含まれるある種の液性因子が角膜上皮の性質を維持するのに有効であることが分かってきた.このように、今年度、誘導上皮幹細胞を用いて重層化上皮シートを作成可能であることを明らかにすることができ、また、角膜上皮細胞の性質の維持に有効な液性因子を見出すことができたことは、今後さらに研究を進める上で大きな成果である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、すでに報告されている論文に基づき角膜輪部の実質細胞(繊維芽細胞)に角膜上皮細胞の誘導・維持活性があると見込まれたが、再現性を確認できなかった.また、それ故にこの角膜輪部繊維芽細胞の角膜上皮細胞の誘導・維持活性に基づいた活性因子の検索も進められなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
輪部繊維芽細胞の角膜上皮細胞の誘導・維持活性を確認できなかったため、今後は水晶体からの誘導・維持活性の確認に焦点を絞る.また、角膜上皮と、由来が同一である結膜上皮をマイクロアレイ解析で比較し、角膜上皮細胞に特異的な因子の中から、角膜上皮細胞の誘導・維持活性があるものを検索する.
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