2010 Fiscal Year Annual Research Report
骨補填材として不適とされたα型リン酸三カルシウムの再評価
Project/Area Number |
22592184
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
有働 公一 山口大学, 大学院・理工学研究科, 准教授 (60145266)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上山 吉哉 山口大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (00168668)
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Keywords | 骨補填材 / リン酸三カルシウム / 3次元連通気孔 |
Research Abstract |
天然の骨と同様の組成を持つリン酸カルシウムに、海綿骨と同じ三次元連通気孔構造を待たせることができれば、非常に優れた骨補填剤になると言われている。3次元連通気孔を持つリン酸カルシウムフォームの作成方法には種々の方法が報告されているが、本研究では、ポリウレタンフォーム法を用いて、種々の温度で焼成し作成したリン酸三カルシウム(α-TCP)フォームの物理的特性および科学的特性を明らかにした。 種々の焼成温度で作成したフォームの収縮率、気孔率、圧縮強さ等の物理的特性、粉末X線回折を用いて結晶構造、格子定数等を測定することによって化学的特性を明らかにした。 α-TCPスラリーを付着させたポリウレタンフォームを1400~1550℃の温度範囲で焼成することでα-TCPフォームを作成した。これらのα-TCPフォームは高い焼成温度ほど焼結により収縮したが、そのすべてが3次元連通気孔を持ったフォームであった。1400℃で焼成したフォームの気孔率は95%であったのに対して、1550℃で焼成したフォームの気孔率は90%であった。さらに1500℃以上の温度で焼成した試料では、焼成温度が低い場合は、α-TCP粉末の焼成が完全には進行せず、a-TCP粉末間には多くのマイクロボアが存在のに対して、高い焼成温度の試料では焼成が完全に進行し低い焼成温度で観察されたマイクロボアはほとんど観察されなかった。マイクロボアの存在により低い焼成温度の試料の圧縮強さは50KPaと非常に低かったが、高い焼成温度の試料の圧縮強さは低い焼成温度の試料の5倍の250kPaであった。粉末X線回折により焼結前後の試料の結晶構造や格子定数を調べたが、焼成後電気炉内で徐冷しているにもかかわらず結晶構造や格子定数に変化はななかったことから、焼成の前後で試料の化学的な変化はなかったことが明らかになった。 以上の実験結果からポリウレタンフォームを用いて作成したa-TCPフォームは、骨補填剤あるいはティッシュエンジニアリングにおける足場剤として利用できる事が示唆された。また、a-TCPは科学的に反応性が高いので、他のリン酸カルシウムフォーム作成時の前駆物質として有効利用できる可能性がある。
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