2011 Fiscal Year Annual Research Report
複雑な乳歯根管系の制御-感染根管治療の確実な成功のために-
Project/Area Number |
22592276
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
八若 保孝 北海道大学, 大学院・歯学研究科, 教授 (60230603)
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Keywords | 感染根管 / 根管洗浄 / 超音波洗浄 / 水酸化カルシウム製剤 / 外部吸収 / スメア層 / 象牙細管 |
Research Abstract |
ヒトの乳歯および永久歯を用い、根管洗浄方法として、一般的なシリンジを使用した洗浄と超音波を使用した洗浄を、さらに根管洗浄剤として、次亜塩素酸ナトリウムによる洗浄とEDTAによる洗浄、両者を使用した洗浄を、グループを分けて実施し、根管内壁の状態を走査型電子顕微鏡で観察した。この結果から、乳歯では、次亜塩素酸ナトリウム+超音波洗浄が根管内壁の象牙細管の開口度が多く、最も有効であった。また、EDTAの使用は、乳歯においては、根管内壁の過度の脱灰につながることが示された。永久歯では、次亜塩素酸ナトリウムおよびEDTAの両者を使用した超音波洗浄が最も効果的であった。よって、有効な根管洗浄を行う場合、乳歯と永久歯では方法が異なることが示された。さらに、水酸化カルシウム製剤の根管充填後のアルカリ性の拡散では、永久歯の方が乳歯に比べ、拡散が広く進むことが示された。これは、象牙細管の太さまどによるところが大きいと考えられる。また、使用した水酸化カルシウム製剤(ビタペックス、カルシペックス、カルビタール)の特徴から、疎水性であるビタペックスは、歯根の外部にまではアルカリ性の拡散が得られず、外表面に留まることが示され、逆に、親水性であるカルシペックスおよびカルビタールは、歯根の外部にまでアルカリ性の拡散が認められた。この点から、歯根外部の炎症の状況を考慮した水酸化カルシウム製剤の選択が、一つの重要な点になることが示唆された。複雑な根管系を有する乳歯において、直接的な根管壁へのアプローチには限界が存在することは明らかであり、その点を考えると、有効な根管洗浄剤(次亜塩素酸ナトリウム)を根管に満たし、リーマーやファイルが届かない部分への超音波を使用した洗浄剤の効果を拡散させることにより、前述の限界を超えることができると考えられた。次年度は、n数を増加させ、より確実な方法にする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
乳歯と永久歯の適切な根管洗浄法には、大きな差が存在することが判明した。ここまでは予定通りであり、概ね順調に進んでいる。しかし、この結果を踏まえると、各動物における適切な根管洗浄法の確立に時間が必要であることが予想できる。計画している動物実験(ラット使用予定)での「有効な根管洗浄法の実施とそれに伴う歯根周囲の修復状況の検索」の遂行のためには、ラットの適切な根管洗浄法をまず確立しなければならない。これまで確立してきた、ヒトの乳歯ならびに永久歯の適切な根管洗浄法とは、別な方法となることが明らかであり、そのため準備の段階に時間が必要なため、動物実験に関してのみ計画よりやや遅れている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒトの乳歯および永久歯に関する適切な根管洗浄法については、概要を示すまでに至った。さらにn数を増やし、より確実な方法とする必要がある。本研究においては、今年度が最終年になるため、この点を中心に研究を遂行する。すなわち、本研究で明らかにできた最も有効な根管洗浄法による乳歯および永久歯の根管内壁の電子顕微鏡観察、水酸化カルシウム製剤の拡散状況などについて、n数を増やすことを行い、得られた3年間の結果をまとめ、臨床における乳歯の最も有効な根管洗浄法を確立する。永久歯についても、同様に行う。ここで、上記(11.現在までの達成度)のように、動物実験開始までに予定以上の時間が必要となっている状況は、好ましいものではなく、動物実験に時間を割くことによる研究時間の分散は避けたい。よって、動物実験については、できる範囲で行うまでとして、今後継続研究とする予定である。
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Research Products
(3 results)