2011 Fiscal Year Annual Research Report
博物館の先住民族への遺骨・遺品返還と先住民族のアイデンティティ形成の関係について
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22601007
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
藤巻 光浩 静岡県立大学, 国際関係学部, 准教授 (50337523)
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Keywords | NAGPRA(再埋葬法) / 博物館 / 主権 / アイデンティティ / 先住民族 / 近代市民社会 |
Research Abstract |
本研究では、NAGPRA(通称「再埋葬法」)以後の北米博物館における「返還(repatriation)」がどのようにインディアンのアイデンティティの形成に寄与し、持続可能な実践となってきたのかをその課題とともに研究し、それをアイヌ民族と関係する博物館の場合と比較研究することを目的としている。そして、博物館と先住民族との新しい関係作りのための基盤作りを図ることも目的としている。 本年度も引き続き、米国と日本のケースを具体的な博物館に着目した。米国の場合は、バンダリア国立記念碑の博物館(BNMM)とニューメキシコ州インディアン文化芸術博物館において、日本の場合は旭川市博物館において、博物館とソースコミュニティの関係に関して調査し、H23年11月に台北で行われるThe Museum2011という国際会議での報告において、主権という概念が、所有するという近代博物館という社会制度に固有の問題であることが分かった。したがって、日米の間の違いを比較するよりも、近代博物館という制度の持つ作用を記述することが必要となってきた。そして、本研究の掲げる「問い」は、このような近代博物館という社会制度の中から、どのような試みがこの制度を乗り越えて行くことができるのか、というものにシフトすることになった。 この「問い」に答えるための方法としては、それぞれの博物館の取り組みを丹念に記述し、その中から、制度としての博物館が、どのようなかたちでソースコミュニティとの関係を捉え直し、どのような具体的な実践を行っているのかを、再調査したり、再整理したりする中で、先住民族の「主権」概念の構築の方法にまで踏み込むことが必要となる。 最終年度は、上記の内容を何らかのかたちで発信してみたい(紀要に論文を掲載、HP構築などを考えている。)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
近代市民社会登場以後生まれた近代博物館のあり方を、歴史的に相対化する作業することができている一方で、私が着目している博物館による具体的な取り組みにも目配せをすることができているため。遺骨・遺品返還という実践は、米国においてもまだまだ始まったばかりなので、具体的な事例に当たるしか方法がないだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
1.具体的な事例を数件に絞ってまとめる必要がある。 2.また、口頭による報告はすでに二回したために、活字にしたり電子媒体にしたり、そろそろ発信の方法を考える時期になった。その方法を模索するのも、今年度の課題である。
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Research Products
(2 results)