2011 Fiscal Year Annual Research Report
犯罪者の社会への再統合と地域のパートナーシップに関する研究
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22614008
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
小長井 賀與 立教大学, コミュニティ福祉学部, 准教授 (50440194)
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Keywords | 犯罪者 / 社会への再統合 / 就労支援 / パートナーシップ / 更正へのパス / 包括的ケア / 社会資源パス / コーディネーター |
Research Abstract |
当研究の目的は、犯罪者の社会再統合のためのパートナーシップについて、1.理論的検討、2.欧米の実態調査、3.日本でのアクションリサーチである。 平成23年度は、これらの目的に沿って文献研究をした他、英国を2度訪問し、犯罪者処遇庁、刑務所、就労支援の社会的企業・NPO、再統合支援機構で調査を行い、英国における犯罪者処遇制度と地域のパートナーシップについて研究をした。殊に施策の統括政府機関である犯罪者処遇庁では詳細に最前線の情報を得る機会をもて、当科研費研究で個別に得てきた情報の鳥緻する枠組みを構築することができた。 これらの成果は学術ジャーナルへの投稿、共著の出版、国際学会での報告として、公表した。 また、英国の研究者2名を招き、所属学部と当科研費研究の共催として、公開セミナーを開催した。招聘研究者は犯罪リスク管理に関する実証的研究者と犯罪者の社会再統合に関する質的研究者であり、ともに研究成果で政府に貢献をされている。当セミナーには法務省、警察庁、内閣府、保護観察所、地域生活定着支援センター、病院などから、政府職員、保護観察官、心理専門家、社会福祉士等実務家が約100名参加され、世界の動向と最新情報を日本の実務家に伝える機会を提供した。 さらに、前年度に行った更生保護施設出身者10名への質問調査結果の理論化を行い、日本における「更生へのパス」のプロトタイプとしてまとめた。この成果を元に、平成24年度には同じ対象者にフォローアップ調査を行って、理論を精緻化し、論文等として公表する予定である。 平成23年度の主な成果は、犯罪者の更生と社会への再統合についての理論化とその成果の発信にある。この領域の日本での取組みも近年発展しているが、さらに日本が英国等の先進事例から学ぶべきは1)犯罪者の社会への再統合を支援する包括的で段階的なケアの仕組みの構築、2)地域の社会資源や人材を繋ぐコーディネーターの育成にあるといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究のテーマである「犯罪者の社会への再統合と地域のパートナーシップに関する研究」に関して、文献研究や海外視察による研究は順調に進み、その成果を学会やジャーナル等で複数回報告した。その点で、計画が順調に進展しているといえる。しかし、当初の地域のパートナーシップ作りに関するアクションリサーチはセミナーの開催や研究成果の報告等を通じて情報発信する段階にあり、具体的な成果は今後の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的の一つに「日本の地域に犯罪者の更生と再統合を推進するパートナーシップ」の構築を挙げていたが、現実のアクションを起こすことが難しいことが分かってきた。日本は今その本格的な胎動が始まったことであるので、本研究の残りの1年は外国での先進経験に関する情報を収集して精緻な形で理論化し、日本の現実に則した形で発信することで、日本におけるこの領域の環境、土壌づくりに寄与することに専念したい。 本研究を基盤研究と位置付け、アクションリサーチは平成25年度以降の研究課題として、次の段階へ繋げることとする。
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Research Products
(8 results)