Research Abstract |
本研究は,蓄光材の発光輝度を高める手法を開発するとともに,その発光輝度に応じた最適な標識サイズ・設置間隔を導き出すことで,電力を必要としない,夜間大規模停電時において有効な避難誘導システムの構築を目指すものである。研究期間の初年度にあたる本年度は,蓄光材の客観的な性能評価に必要な測定系の構築を行った上で,励起源が蛍光灯などの人工光源である場合の屋内環境における発光輝度増強方法について検討を行った。 まず,測定系の構築については,蓄光材の励起源である微弱な紫外線(最小強度0.1μW/cm^2),及び,蓄光材の微弱な発光輝度(最小強度10mcd/m^2)を正確に評価することができる実験環境を整えた。つぎに,屋内環境を想定した発光輝度増強方法については,励起源として,白熱灯,蛍光灯,LED灯,紫外線灯など各種光源を使った場合の消費電力と発光輝度との関係を比較した。その結果,使用する光源によって,励起効率が大きく異なった。現在,人工光源は,主に照度(可視光の強度)を確保する観点から選択されているため,その性能指標としては,可視光への変換効率が重視されているが,光源によっては,蓄光材の励起に適さないことがあり,とくに新しい原理による光源に切り替える際には,注意が必要であることが明らかとなった。ただし,励起効率としては紫外線灯が他の光源に比べて極端に高いことから,照度確保のための光源と蓄光材を励起するための光源とを別々に設置した方が消費電力が抑えられる可能性がある。今後,これら本年度に得られた基礎データに基づいて,蓄光材を用いた避難誘導システムの設計指針を定める必要がある。
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