2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22652008
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
林 晋 京都大学, 文学研究科, 教授 (40156443)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 正勝 京都大学, 文学研究科, 教授 (90165390)
出口 康夫 京都大学, 文学研究科, 准教授 (20314073)
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Keywords | 京都学派の哲学 / WEBアーカイブ / テキスト生成研究 |
Research Abstract |
平成23年度の主たる成果は次の4点である。(1)京都学派アーカイブの試験運用を開始、(2)西田資料原本の現状を調査、(3)田辺の種の論理の進化において数理哲学が本質的に使われたことをテキスト発生学的に解明。(4)上記3の研究の結果、いままで理解されていなかった、種の論理最初の大改変である「種の自己否定」の概念の内容を解明した、(5)種の論理の解釈として知られる中沢新一の多様体哲学を詳細に分析し、上記4の研究に基づいて、それが田辺哲学解釈として不適当であることを実証。 (1)はhttp://www.kyoto-gakuha.infoである。これはすでにほぼ完成しており、特に西田手書き原稿はすでに京大所蔵のもの、すべて三千余が掲示されている。また、はこだて未来大学の協力を得て、これらの手書き原稿を筆跡の類似性により検索できるようにもなっている。田辺資料の整備と、西田資料を一括ダウンロードして、SMART-GSシステムにより全画像を一斉に検索する手段を提供した上で正式公開となる。学術的には、合わせて行った京大、群馬大の索引の画像化と公開がより重要である°(2)は岩波書店、石川県哲学館などの協力を得て、全集が編集されながらもバラバラのままである原史料の保存と保有の状況を調査したものであるが、これは思ったより状況が悪く、他の京都学派資料の保全も合わせて、抜本的な対策が必要であることが判明した。これは現在の研究の範囲では資金などの問題で対応ができないため、現在、林、藤田、研究組織以外の京都学派関係者と保全対策について相談を始めているところである。(3)は、林の西田・田辺記念講演や、2012年1月号の岩波「思想」の田辺哲学特集号の林の論文で、その成果を部分的に公表したものだが、従来、我々が考えていたことと異なり、田辺の種の論理の発生・進化の初期段階で、数理哲学が本質的に種の論理の構造の決定に使用されていたことが、田辺の学生、佐藤省三の同時期の数理哲学論文や、田辺の昭和9年の特殊講義メモの分析などから判明してきたもので、テンソル概念が、田辺のシンボルのようにさえいわれることもある「切断」の哲学のオリジンであった可能性が非常に高くなってきている。(4)はその成果を踏まえて、田辺哲学を多様体の哲学と関連付ける澤口や中沢の節を批判したものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
データベースの公開は、計画より早く進んでいるし、試験公開ながら、Twitterなどでの反応をみると高い評価を得ているようだ。また、田辺哲学の生成研究は、予想しなかったほどの数理哲学の重要性という、従来の説と異なり、我々自身の当初の予想とも大きく異なる、田辺哲学のダイナミズムが資料により解明されつつあり、この点は予定したもの、期待したものを、大きく上回る成果であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
上記、項目9の(3)に関連して述べた、テンソルと切断の関連と、それが果たした「種の自己否定」の考え方が、後期の懺悔道、死の哲学などに反映されているところが見受けられる。これを史料ベースで実証していくとともに、田辺哲学のシンボルともいえる「切断概念」の生成史を完成させる。また、データベースは、できるだけ早く正式公開を行う。
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Research Products
(5 results)