2011 Fiscal Year Annual Research Report
複数の歴史認識における史料を媒介とした新しい歴史記述の方法論的研究
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22652063
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
冨山 一郎 同志社大学, グローバル・スタディーズ研究科, 教授 (50192662)
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Keywords | 歴史認識 / 郷土史 / 植民地主義 / 感情記憶 / 奄美近現代史 / 沖縄近現代史 / 社会運動 |
Research Abstract |
本年度は、これまで行ってきた史料の発掘と在地の研究者や市民との史料読解をめぐる討議の結果を最終的に総括するために、以下に記す2つの会議ならびに研究会を組織し、加えて、最終年度の取りまとめを行った。また研究成果として下記に記すような新しい史料集の刊行を、現在準備中である。 (1)鹿児島県奄美大島名瀬において研究会を組織した。同研究会では沖縄国際大学准教授の鳥山淳氏(沖縄現代史)、アイヌ民族文化センター勤務の小川正人氏(アイヌ史)らとともに、奄美大島名瀬の名瀬教育会館の所蔵されている奄美現代史にかかわる膨大な史料(通称松田清文庫)をめぐる史料解釈を具体的に検討した。その際、名瀬において奄美郷土図書店を営む森本眞一郎氏、ならびに郷土史家の佐竹京子氏、さらに奄美において長い間郷土史研究をになってきた奄美郷土史研究会のメンバーらの協力を得た。 (2)京都で研究会を開催した。上記の沖縄国際大学准教授の鳥山淳氏、アイヌ民族文化センター勤務の小川正人氏に加え、京都大学教育学研究科准教授の駒込武氏、聖トマス大学准教授の森宣雄氏(沖縄近現代史)ならびに岩波書店編集部の小島潔氏の参加を求め、実証のための史料集ではなく、複数の歴史認識を前提とした討議のための史料集作成の可能性を、具体的に検討した。 こうした研究作業により、地域において歴史的意味を担ってきた史料を、その地域とは別の主体にかかわる歴史記述の問題として読み直すとき、歴史事実の実証的確認以外に何が問われるのかということを、松田文庫所収の史料読解、ならびに奄美在住の郷土史家や社会運動家の郷土認識と奄美近現代史研究の関係をめぐって、きわめて具体的に検討することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題である、複数の認識を史料読解に即して検討し、新しい歴史記述の可能性をさぐるという研究目的は、奄美近現代史をめぐって極めて具体的に遂行することができた。またこうした試みを、沖縄近現代史をめぐっても、同様に検討することができた。しかしながら、かかる史料に基づく歴史記述の可能性を、史料集の可能性として刊行する作業はいまだはじまったばかりであり、現在も進行中である。最終的な研究の達成は、この史料集の完成を待って、完了すると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、新しい歴史記述のための史料集の編集と刊行に向けての総括作業が軸となる。かかる作業においては、沖縄国際大学准教授の鳥山淳氏(沖縄現代史)、アイヌ民族文化センター勤務の小川正人氏(アイヌ史)京都大学教育学研究科准教授の駒込武氏、聖トマス大学准教授の森宣雄氏(沖縄近現代史)ならびに岩波書店編集部の小島潔氏らの協力を求める予定である。
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Research Products
(5 results)