2012 Fiscal Year Annual Research Report
複数の歴史認識における史料を媒介とした新しい歴史記述の方法論的研究
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22652063
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
冨山 一郎 同志社大学, グローバル・スタディーズ研究科, 教授 (50192662)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2013-03-31
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Keywords | 歴史認識 / 植民地主義 / 地域史 / 奄美近現代史 / 沖縄近現代史 / アイヌ史 / 感情記憶 / 歴史記述 |
Research Abstract |
本年度は、奄美大島名瀬の名瀬教育会館に存在する奄美沖縄にかかわる現代史資料(松田清文庫)における資料探索と整理、ならびに同資料をめぐって、奄美在住の郷土研究者、社会運動家とともに研究会を開催した。また同資料にかかわる歴史学的意義について、京都において沖縄近現代史研究者、台湾近現代史研究者、韓国近現代史研究者、アイヌ史研究者を招聘し、資料の意義ならびに同資料にもとずく歴史記述の可能性について討議をした。また同時に、札幌においてアイヌ史研究者との意見交換、沖縄において戦後沖縄の社会運動経験者からの聞き取り作業を行った。その結果、明らかになった内容ならびに論点は、以下のとおりである。 まず第一に、名瀬教育会館所蔵の資料は、奄美における社会運動にかかわる比類なき第一級の資料であるという点である。また同時に、戦後における沖縄と奄美の社会運動が、東京や大阪における戦後直後の沖縄出身者や奄美出身者の運動と重なり合いながら展開したことを示すものでもある。その重なり合いは、当時の奄美共産党ならびに沖縄非合法共産党にかかわるものであると同時に、インフォーマルな人的つながりにおいても構成されていた。かかるつながりを理解する資料は、他には存在しないだろう。 第二に、同資料は、歴史研究のために保存されていたのではなく、社会運動家である松田清氏が、奄美の社会運動の記録として収集し続けてきたものであり、その資料群は、奄美在住の奄美郷土史研究者や社会運動家の郷土への思いを反映したものである。かかる思いをふまえていかなる歴史認識、歴史記述があり得るのか。かかる点をめぐって、長時間にわたる討議の場を設けた。資料の意味をその資料が蓄積されてきた場における意味をふまえて考察し、歴史を記述する可能性を探ることにこそ、本研究プロジェクトの研究目的がある。本年度では、この課題を検討する重要な端緒を獲得したといえる。
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Current Status of Research Progress |
Reason
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(4 results)