2010 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀後半のベルギー王国における地理学と芸術の関係性
Project/Area Number |
22652074
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
島津 俊之 和歌山大学, 教育学部, 准教授 (60216075)
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Keywords | 地理学史 / 芸術 / ベルギー王国 / モニュメント / 記憶 / 挿絵 / 画家 / 地理書 |
Research Abstract |
平成22年度は,主に既存の文献資料やWEB上のリソース,現地でのフィールドワークで収集した史資料に基づき,19世紀ベルギー王国における広義の地理学と芸術との関係性について考察し,地理学者や地理学の可視的メディアとしての芸術の意義の解明を試みた。『和歌山地理』に論文1編(査読有)を発表し,19世紀後期の地理書の執筆・編集や挿絵の製作に携わった人々が広義の《芸術》というジャンルに属していたことを論じた。また,関連するテーマについてIGU地域会議(イスラエル)における地理学史コミッションの集会で発表した。未公表の成果としては,フェルメールを「再発見」したとされるトレ=ビュルガーが1866年にGazette des Beaux-Artsに公表した論文"Van der Meer de Delft"のなかに,《地理学者》の複製版画(エティエンヌ・ボクール描画/レオン=ルイ・シャポン線刻)が掲載されたことが判った。19世紀仏語圏に《地理学者》の図像を広めたメディアの一つを突き止めたことになる。フェルメールのみならず,地図や地球儀(天球儀)と人物を配した構図の絵画は,ルネサンス期ネーデルラントの人文主義者エラスムスの『愚神礼讃』(1515年版)の挿絵以来の伝統を有し,17世紀ネーデルラントでも同様の絵画がいくつか確認される。フェルメールと同時代を生きたレンブラントも,《ファウスト》と称される,《地理学者》と似た構図の版画を1652年頃に製作していた。ベルギー王国では,1913年にルイ・テヴネが《地図を指差す男》という絵画を描いたことも新たに判明した。アンリ・ド・ブラーケレールの《地理学者》(1871年)に始まるこの国のかかる図像表現は,フェルメールの「再発見」のみならず,エラスムス以来のネーデルラント絵画の伝統の延長上にも位置付ける必要がある。
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Research Products
(2 results)