2011 Fiscal Year Annual Research Report
デジタル映像技術を導入した人類学フィールド調査方法論の探求
Project/Area Number |
22652077
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高倉 浩樹 東北大学, 東北アジア研究センター, 准教授 (00305400)
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Keywords | 映像人類学 / 民俗写真 / 展示 / デジタル映像 / フィールドワーク / デジタルビデオ / 写真作品 |
Research Abstract |
本年度の目的は(1)人類学者の主要写真史の構築を行う事、(2)写真・映像の利用と民族誌記述にかかわる理論研究を、文献研究とオリジナル写真鑑賞調査を行う事であった。 (1)については戦後の日本の人類学者を中心に研究を進めた。対象となる研究者の選別方法と分析手法については一定の方法を確立したが、分析そのものは当初の見通しの半分ほどで終わってしまった。 (2)については、特に写真展示という利用法によって人類学の異文化理解についての社会貢献および研究方法についての知見をえた。具体的には、(イ)東京都写真美術館でオリジナル写真の調査を進めた結果、同じ写真を展示する場合でもあってもテーマ設定を変えて並べ替える事でイメージの解釈方向性は左右されることである。(ロ)写真展示を行う事は、調査者対象の関係・調査資料の共同管理などの点に関連して人類学研究方法全体に方法論的革新をもたらすという点である。第三に(ハ)民族誌写真を用いた展示実践をおこなったことである。2012年3月22日から24日においてサハ共和国エヴェノ・ブィタンタイ郡サクリール村で展示を行った。研究資料である民俗写真を現地に返還し、地域の歴史的資料とすること等を行い、当該地域で大きな反響を呼ぶ企画となった。実践を通して、研究資料は資料それ自体として被調査地の歴史記録・文化交流媒体として積極的に利用していくことの意義がきわめて強く明示されたといえる。 また研究協力者の齋藤秀一氏と共同で、民族誌映像ワークショップを6月22日、7月13日、8月24日、9月11日、10月26日、1月25日の6回にわたって開催した。この事を通して写真と動画の特徴とくに動画の編集方法を実践的に学ぶ機会を設けることで、組み写真と動画の関係性について実践的な知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究目的の内、人類学分野の主要な写真史を打ち立てる作業については、研究手法は確立したが適切な研究資料を十分な形で入手できなかった。しかしそれ以外の目的については理論・方法・実践を通して、デジタル映像をつかった人類学フィールドワーク調査の方法論について新しい知見をえることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
人類学写真史の記述については現在入手できている資料を中心に研究ノートをまとめる。一方で、デジタル映像技術の習得にかかわる公開ワークショップ、昨年度の展示実践の成果を用いた方法と理論に関する論文執筆を2012年度はすすめる。
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Research Products
(2 results)