2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22653012
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
吉田 邦彦 北海道大学, 大学院・法学研究科, 教授 (00143347)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
早坂 啓造 岩手大学, 名誉教授 (60003985)
岡田 秀二 岩手大学, 農学部, 教授 (70133907)
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Keywords | 入会権 / コモンズ / 先住民族補償 / 森林管理 / 居住福祉 / 民族植物学 |
Research Abstract |
本研究は、環境問題の緊迫化、(それとの関連での)森林保護管理の重要性とその崩壊の事態を踏まえて、民法学の領域では、「入会権」の議論に光を当て、その現代的意義を積極的に検討し、コモンズ論など学際的議論の昂揚にも留意しつつ、入会モデル応用による実践的提言を試みるものである。その際には、所有権・使用収益権補償、とくに先住民族保護の展望を探ることも目的とした。 これとの関連で、第1に、入会問題(理論、実態)について、早坂は詳細な実証的研究成果を発表した。 第2に、よりマクロの見地から、個人主義的所有論の抜本的再検討のためにも、既にオストロム理論のコモンズ論分析を開始しているが、そこで示される実証的事例として、森林保護以外にも、海洋資源の保護、灌漑制度、水資源の共同利用等にも、視野を広げて検討し、さらに第3に、それに関連して、先住民族の伝統的大地(生活空間)利用の哲学、伝統的使用権の推移についての知見を深めた(とくにアイヌ民族の場合)。この点で、例えば、中国・雲南省の少数民族の土地利用のあり方(資本主義的な土地所有(それによるゴム園のプランテーション化)との対比)、インドや台湾における伝統的民族の土地利用変遷についても、比較法的に視野を広げて、伝統的な土地利用のコモンズ管理上の意義を追求した。 そして今期には、この第3の研究の進展をみた。アイヌ民族の所有権剥奪との関連での補償に関し研究報告し(2010年12月、2011年4月、12月)、さらに、中国雲南省の棚田や先住民族の伝統的土地利用とその資本主義的浸食状況を調査し、昆明の民族植物の権威の裴教授(中国科学院昆明植物研究所所長)と有益な意見交換をした(2011年4~5月)。さらに、南アフリカの先住民族の土地剥奪とその解決の仕方を調査した(2012年2月に現地視察)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
入会権の研究は進展しているが、ヨリ包括的に行う必要を感じている。他方で、先住民族の伝統的土地利用浸食、共同的土地利用関係の意義などについての調査に、研究上のかなりの進展をみた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、歴史的問題と今日的課題との有機的考察、諸外国の先住民族補償の事例との比較法的考察のまとめの作業を行いたい。
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Research Products
(3 results)