2011 Fiscal Year Annual Research Report
対称性推論は言語学習のタマゴかニワトリか:ヒト乳児とチンパンジーの直接比較
Project/Area Number |
22653093
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
今井 むつみ 慶應義塾大学, 環境情報学部, 教授 (60255601)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 浩之 玉川大学, 工学部, 教授 (10349326)
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Keywords | 非論理推論 / 比較心理学 / 対称性 |
Research Abstract |
ヒトの非論理的であるが効率のよい思考の背景に、本来一方向でしか成り立たないA→Bの関係を逆も成立すると推論してしまう対称性推論を行うバイアスがあると言われている。対称性推論は、ことばと指示対称の関係を理解し語意推論をするために必須である。しかし、このバイアスが言語学習によって出現するのか、言語学習以前に存在するのか、そもそもこれが本当にヒト固有の能力なのか、について議論がある。本研究では従来のオペラント条件づけではなく、ヒト乳児と直接比較可能な土俵で対称性推論の有無を検討することを試みることを目的としている。` 本研究は乳児とチンパンジーの推論能力を直接比較できるパラダイムの開発をめざし、代表者・分担者の今井・岡甲は非言語の領域で言語(語意)学習が始まる以前(生後8ヶ月)、言語学習初期(生後14ヶ月)、語彙数が急速に増加する語彙爆発期にある乳児(生後18ヶ月)にモノ→動きの連合を学習させる。まず、学習と同じ方向性(モノ→動き)で乳児がこの刺激・手続きで対応関係の学習ができるかを確認する。順条件の学習が確認できたら、別の対称性テストを行う。こちらでは学習の方向性と逆の方向性、つまり動き→モノの対応関係を推論するかをテストし、データ数を蓄積しつつある。同時に連携研究者である京都大学霊長類研究所の友永とともに、乳児と同様に、報酬による強化を介せず、対応関係を繰り返し提示するだけでチンパンジーが同じ刺激でモノ→動きの連合が学習できるか、さらに、逆方向の対称性の学習が可能かどうかを検討中である。今後、8ヶ月児で対称性テストに成功すれば14ヶ月児のみ、順方向での学習が可能なのに対称性テストに失敗したという結果であれば14ヶ月と18ヶ月のデータ収集を行う。チシパンジーで強化なし学習で順方向の対応関係の学習が成立することが確認でき次第、対称性テストを行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
乳児の心理実験データの収集やチンパンジーの行動データを集めることは容易ではないため、当初計画以上の進展はないが、当初想定どおりに直接比較可能な実験パラダイムによるデータの収集が進んでいる。同時にデータ分析も行っており、おおむね順調であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後ともデータ収集を継続し、並行してデータ解析を進める。乳児について明らかになった実験結果については、成果発表を随時行ってきており、チンパンジーについても途中経過を成果公開している。 平成24年度は最終年度であり、平成22年度・23年度に収集した直接比較可能な実験パラダイムによるデータを元に乳児のデータとチンパンジーの実験結果を直接比較し、本研究が目的とする対称性推論の有無について検討する。
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Research Products
(9 results)