2011 Fiscal Year Annual Research Report
持続可能な高校教育改革の実践と構造に関する臨床的研究
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22653102
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
菊地 栄治 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (10211872)
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Keywords | 高校教育改革 / 持続可能性 / ホリスティック / コラボレーション / 学習する組織 |
Research Abstract |
国内の高等学校を対象としたインテンシブな事例研究を通して、組織づくりの4つの理念型を抽出することができた。旧来的な処し方=「近代の組織づくり」と持続可能性につながる処し方=「ホリスティック(holistic)な組織づくり」を対比的に整理することができた。 (1)望ましい生徒像にもとづく組織目標vs.「生徒の現実(切実さ)」からの出発 一般的・抽象的な「一括りにする言説」から自由になり、生徒の現実・生活背景をしっかりと把握し、生徒の行為や声の文脈をつかみ取つていくことが尊重される。 (2)優秀で均質な生徒」のかき集めvs.「生徒のエンパワメント」の実践 「優秀で均質な生徒」を掬い取るのではなく、エンパワメントの実践として位置づけられるのである。常にこちら側を問うていくことがポイントとなる。 (3)少数の教職員層による目標設定vs.コンセプトを共有するプロセス 学校目標を達成するための組み立てラインで動くのではなく、組織の内外でコンセプトを共有することがきわめて重要である。公共圏の生成という視点が有意義である。 (4)他人任せの改革vs.一人ひとりが試みる改革 他人任せにするのではなく、一人でも動いていくという覚悟が意味を持つ。動いていくにつれて実践や活動が理解され、組織内外で応援団が形成されていくことがわかる。 これらのホリスティックな組織的条件が満たされるとき、高校改革は持続可能になっていく。そのためのツールとして公共圏という場が必要になるのである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
時代状況や高校教育の史的現実に照らしてきわめて重要な示唆を持つ2つの高校に焦点を合わせて、持続可能性の鍵を握る組織的諸条件を特定することができたと自己評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題について考究を進める過程で、事例分析を深めていくことの意義が確認できた。(1)持続可能な取り組みを実施している、(2)研究代表者が比較的長期にかかわりコラボレーションを実現している、という2つの観点に立ち、焦点を絞って分析・考察を深めていくこととする。とりわけ、卒業生の状況把握を視野に入れつつ、研究課題のさらなる考察に結びつけていくステップとして位置づけることとする。そのためには、実践の当:事者との信頼関係を持続可能なものにしていくことが不可欠であり、今後とも意を用いていきたい。
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