2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22654035
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
河本 敏郎 神戸大学, 理学研究科, 准教授 (70192573)
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Keywords | スピン / レーザー |
Research Abstract |
可視領域の吸収帯が大きな磁気円偏光二色性をもつことが知られているCaF_2結晶中のTm^<2+>イオンの405nm近傍の吸収線において,共鳴円偏光のパルス励起と円偏光二色性を利用して基底状態のスピン偏極(磁化)を生成し,横磁場中のラーモア歳差運動を時間領域で観測した。また,不均一広がりで磁化が消失した後,制御光を入射させてスピンを180度回転させる位相反転操作を行い,一度失われたスピンコヒーレンスが回復できることを示した。これらは,パルス光の共鳴吸収による効果である。 同じ試料で,非共鳴円偏光の制御パルスによって仮想パルス磁場を発生させ,スピンのコヒーレントな位相制御を試みたが,残念ながらライトシフトの効果によるスピンの光制御は確認できなかった。 フェムト秒レーザーと非線形光学結晶(ZnTe)中の光整流作用によってテラヘルツ電磁波を発生させ,EOサンプリング法によってテラヘルツ電場を検出するテラヘルツ時間領域分光(terahertz time-domain spectroscopy,THz-TDS)システムを組み,測定系の立ち上げを行った。 反強磁性体である酸化マンガン(MnO)において,テラヘルツ時間領域分光法を用いた反強磁性マグノンの減衰振動波形の観測を行った。低温では0.8THz付近に反強磁性共鳴周波数が存在することが確認できた。共鳴周波数の温度依存性の測定から,共鳴周波数が温度上昇とともにネール温度(116K)に向かってソフト化していくことが確認できた。スピン5/2に対する分子場近似を用いた理論によって,観測された共鳴周波数の温度変化を説明できることがわかった。また,ネール温度近傍における線幅の臨界現象やテヘルツ領域の屈折率の異常などが明らかになった。
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