2011 Fiscal Year Annual Research Report
偏光赤外放射光による傾斜ディラックコーンの異方的誘電応答の解明
Project/Area Number |
22654038
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐々木 孝彦 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (20241565)
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Keywords | 赤外光学スペクトル / ディラック電子 / 有機伝導体 / 放射光 / 高圧力 |
Research Abstract |
本研究は、有機ゼロギャップ半導体(BEDT-TTF)2I3において理論的に示唆されている特異な傾斜ディラックコーンの検出に遠赤外分光手法により挑戦し、低エネルギー励起状態や異方的な速度を有する質量ゼロ準粒子状態の解明を目指すものである。平成23年度は、前年度に予備的に行った放射光利用の高圧赤外実験の結果を基にして、ダイヤモンドアンビルセルへの微小有機単結晶の封入と圧力印加方法、偏光導入方法、冷却方法、またダイヤモンドアンビルセル内試料に対する反射率変換、解析手法などの実験遂行に必要な技術課題の検討を行った。以下に本年度の成果を記す。 1)ダイヤモンドアンビルセルへの微小有機結晶の封入手法の確立。有機結晶はやわらかく、圧力や歪による状態変化が大きいため、ダイヤモンドアンビルセルへの封入の仕方、光学反射測定のためのアンビル面への取り付け方や圧力媒体の選択が無機物質の場合よりも難しく、高圧光学実験時に困難があった。これらの課題を手法の改良などによりほぼ解決した。しかし、継続的な改善は今後も必要である。 2)ダイヤモンドアンビルセル内試料に対する光学反射率解析方法の検討。ダイヤモンドアンビルセル内の試料に対する光学測定において反射率を求めるためには通常の真空界面だけではなく、間にダイヤモンドを挟んだ、真空-ダイヤモンド-試料表面の構造を考慮した反射率解析を行う必要がある。協力研究者の岡村准教授(神戸大学)の協力により、解析方法の検討と確認を行った。 以上のような実験技術の蓄積により、放射光利用による高圧力中赤外光学スペクトル実験の準備をほぼ完了することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度においては、ダイアモンドアンビルセルへの試料封入技術を改良することで、実験遂行上の技術的課題を解決するためにSPring-8での実験を3回予定していた。しかし、研究代表者(東北大学)の東日本大震災後の研究実施体制の復旧や実験条件の検討に時間を要したことなどにより当初予定に対してSPring-8での1回分の実験を行うことができず、平成24年度に計画の一部繰り越しを行った。 このため、本研究における実験技術の確立に遅れが出ている。しかし、24年度前期への繰り越しの中でほぼ解決するに至っている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度への若干の繰り越しも含む23年度の研究で有機物質に対する放射光高圧赤外スペクトル実験技術の開発はほぼ完了している。今後は、対象とする有機ディラック電子系候補物質である、(BEDT-TTF)2I3の高圧力下赤外スペクトル測定の実行とその解析、理論比較検討を行う予定である。
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Research Products
(2 results)