2012 Fiscal Year Annual Research Report
偏光赤外放射光による傾斜ディラックコーンの異方的誘電応答の解明
Project/Area Number |
22654038
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐々木 孝彦 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (20241565)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2013-03-31
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Keywords | 赤外スペクトル / ディラック電子 / 有機導体 / 放射光 / 高圧力 |
Research Abstract |
本研究は、有機ゼロギャップ半導体(BEDT-TTF)2I3において理論的に示唆されている特異な傾斜ディラックコーンの検出に遠赤外分光手法により挑戦し、低エネルギー励起状態や異方的な速度を有する質量ゼロ準粒子状態の解明を目指すものである。平成24年度は、本研究の最終年度にあたり、前年度までに行ってきた、予備実験、技術開発を基にして放射光利用の本実験を行い、その実験結果の解析、検討を行った。以下にその実験結果と解析結果について記す。 1)高輝度放射光施設SPring-8の赤外ビームラインBL43IRで8GPa, 4Kまでの赤外反射スペクトル測定を行った。得られたスペクトルは、大きな圧力依存性を有し、常圧での電荷秩序状態から高圧力中では半金属的なスペクトルを示した。圧力下のスペクトルは赤外領域でエネルギー依存性が小さく、ディラック状態的な振舞いをしている。また、常圧では電荷秩序転移温度で大きなスペクトル変化があるが、圧力中では室温から4Kの範囲でスペクトル形状の変化が非常に小さく、本物質のディラック状態を反映した振舞いを観測できた。 2)低温高圧力下の赤外スペクトル解析を理論計算と比較して行った。名古屋大学のグループにより、本物質を対象としたディラック状態での光学応答の理論計算が発表されており、実験結果との比較検討を行った。高エネルギー側の振舞は計算と矛盾しない振舞が観測されているが、計算で示されている傾斜ディラックコーン状態を最も特徴づける低エネルギー領域は、今回の実験では到達できないエネルギー領域であることが分かり、この点は実験的に未解決となった。 以上のように、本研究により放射光使用による有機物質の高圧力中赤外光学測定は、技術的に可能になった。本物質のディラック状態を光学的に検証、解明するためにはより低エネルギー領域での研究、技術開発が必要であり、今後の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Reason
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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