2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22655049
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
植村 卓史 京都大学, 工学研究科, 准教授 (50346079)
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Keywords | 多孔性金属錯体 / 触媒反応場 / オリゴフッ化ビニリデン / ビニル化 / 細孔サイズ |
Research Abstract |
金属イオンと有機配位子との自己集合によって得られる多孔性金属錯体のナノ細孔を触媒反応場として用いることで、種々の反応制御が行われている。セルロースのような高分子型基質がこのような場において効率よく分解反応が促進するかを調べるために、種々の高分子やオリゴマーの細孔内での反応制御を試みた。ここでは特に、末端がヨウ素化されたオリゴフッ化ビニリデン(OVDF)を基質として、塩基点を有する錯体細孔中に導入することで、その末端官能基化(ビニル化)が進行するかどうか試みた。多孔性金属錯体[Zn_2(L)_2(ted)]_n(ted=triethylenediamine; 1a, L=1,4-naphthalenedicarboxylate; 1b, L=terephthalate; 1c, L=9,10-anthracenedicarboxylate)の細孔内(1a,1b,1cそれぞれの細孔サイズ=0.75,0.57,0.48nm)にOVDFを導入し、140℃で12時間放置すると、1aおよび1bを用いた場合、末端がビニル基に変換されたOVDFが良好な収率で得られた。種々のモデル実験を行った結果、この反応は錯体中の配位子におけるテレフタレート基の酸素部位が塩基点として機能するためであることが明らかになった。1aからは高い純度で末端官能基化された生成物を生じたが、1bの細孔から得られた生成物には多くの副生成物が混在していることがわかった。また、1cを反応場とした場合は反応率が大きく低下することが明らかになった。これらの理由は細孔のサイズによるものであり、OVDFのサイズにちょうどフィットする1aが最も適した反応場を提供することが分かった。つまり、高分子型基質を細孔内で効率よく反応させるためには、錯体細孔のサイズを変えることで、その拡散速度や取り込まれ方を変化させることが重要であることがわかった。
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