2011 Fiscal Year Annual Research Report
垂直断崖における動物類の生物多様性、適応進化、生態学的機能に関する研究
Project/Area Number |
22657026
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
鹿野 雄一 九州大学, 工学研究院, 学術研究員 (60467876)
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Keywords | 滝 / 陸封 / 平行進化 / キバラヨシノボリ / クロヨシノボリ / 西表島 |
Research Abstract |
本年度は断崖の特殊な形態である「滝」の進化生態学的な意義を明らかにした.調査研究の対象は西表島におけるクロヨシノボリ(Rhinogobitus brunneus)とキバラヨシノボリ(Rhinogobius sp.YB)と、した.西表島はその地質学的特性のため多くの滝が多く存在するが,西表北部の河川を網羅的(11河川30地点)に調べたところ,キバラヨシノボリは滝上(落差3m以上)に限って生息することが明らかになった,さらに,クロヨシノボリをはじめとする回遊魚・汽水魚は滝上にはほとんど生息しなかった,一方,ミトコンドリアDNA(ND5とCytB:計2000bp)における解析を行ったところ,キバラヨシノボリは各個体群ごとにまとまりを形成し,ネットワークの外側に位置した.一方,クロヨシノボリは捕獲地点ごとにまとまりを形成することなく,ネットワークの内部にランダムに位置した.このことから,キバラヨシノボリは回遊型のクロヨシノボリからそれぞれ独立に滝によって陸封され,進化したと考えられる.その一方で,それぞれに独立したと考えられるキバラヨシノボリの各個体群はほぼ同一の形態を示した.このことから,キバラヨシノボリはクロヨシノボリは平行進化したものと考えられる.さらに,各キバラヨシノボリ個体群からクロヨシノボリ全体までの集団間遺伝距離は滝の高さ(6m~57m)と有意に比例した.滝や崖は硬さの違う地層が風化して形成されるが,滝の高さが各キバラヨシノボリ個体群め隔離された時間を示すものと考えられる.本研究ではキバラヨシノボリにお2る平行進化を明らかにするとともに,それが「滝」という地形的な要因によりもたらされたことを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度ほ「滝」の進化生態学的な意義を明らかにするため西表島での調査研究に集中し,「平行進化」という興味深いテーマを得ることができたことは大変有意義であったと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,補助的な追加調査・データ解析を行うとともに,本研究の主な目的であった「(1)断崖壁面における動物の多様性」および「(2)滝が河川生態系に与える進化生態学的な意義」について論文作成に取りかかる予定である.
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Research Products
(1 results)