2010 Fiscal Year Annual Research Report
樹木の花粉化石DNA情報を利用した森林分布変遷史の解析
Project/Area Number |
22658046
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
陶山 佳久 東北大学, 大学院・農学研究科, 准教授 (60282315)
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Keywords | 古代DNA / 分子系統地理 / 葉緑体DNA / ミトコンドリアDNA / 針葉樹 / 花粉分析 / スウェーデン / 国際研究者交流 |
Research Abstract |
花粉化石のDNA分析によって、過去に分布した樹木の遺伝的情報を直接取得し、樹木個体群の分布変遷史を時空間的に明らかにする研究に取り組んだ。分析を計画した2種類の試料は、1)スウェーデン中部の湖から得られた湖底堆積物中の花粉と、2)ベルーハ氷河から採取された雪氷試料中の花粉である。これらの試料について、増幅成功率に関する予備的な実験を行った上で、最も効率が良いと考えられた試料・方法を用いて、森林分布変遷史解析のためのデータを取得した。スウェーデンの試料については、ドイツトウヒのミトコンドリアDNAを対象として分析を行った。その結果、6500~10300年前の湖底堆積物から現生のスカンジナビア個体群に特異的なハプロタイプが検出され、氷河期においてスカンジナビアにドイツトウヒのフェユージアが存在したことを示唆する結果が得られた。ベルーハ氷河のサンプルについては、葉緑体DNAを分析対象とし、マツ属花粉の種識別を目的として分析を行った。取得した塩基配列から、分析した花粉は、Quinquefoliae節とPinus節に分類されるマツ属花粉であることがわかった。ベルーハ氷河周辺には現在、Quinquefoliae節に属するハイマツ(Pinus pumila)・シベリアマツ(Pinus sibirica)と、Pinus節に属するヨーロッパアカマツ(Pinus sylvestris)が分布しており、この一致は、氷河に飛来する花粉は周辺に分布するマツ属起源であることを示唆した。本研究により、氷河中のマツ属花粉はDNA分析によって、節レベルで分類できることが示された。以上の成果は、堆積花粉のDNA分析による、新しい分子系統地理学のアプローチの提案としての意義をもつ。
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Research Products
(6 results)