2010 Fiscal Year Annual Research Report
ポリネーションと農業生産力に関する実証的研究:農業技術と生態環境の結節
Project/Area Number |
22658068
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
淡路 和則 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 准教授 (90201904)
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Keywords | 養蜂 / ポリネーション / 農業経済学 / 果樹作 / 蜜蜂 / 蜜源 / 経営分析 / 生物多様性 |
Research Abstract |
養蜂に関する統計は整備されておらず経営実態についても明らかではないことから養蜂経営の実態調査を事例的に実施し、収入構造と経営活動を把握した。経営収入において蜂蜜等の販売の比重は小さく、授粉のための蜜蜂リース収入に依存した構造になっていることが把握された。熊本県の事例ではリース料金は、いちごで1作期10,000円、メロンで1日800円であり、ほぼ損益分岐点の水準となっていた。この料金水準は地域の需給関係が反映されていると考えられ、需要の多い千葉県ではこの2倍の水準となっていることが把握された。 採蜜については、巣箱を置く対価として果樹園、耕作農家に2~3升の蜜を現物で提供する慣行となっているケースが多いことが把握されたが、花の種類によっては無料、リースとなるケースも存在した。また菜の花の事例でみると、巣箱の設置密度は20~30aに1箱を目安としており、作業効率から15~20箱の扱いを採蜜作業の単位としていることから、養蜂が行われるためには作付面積が最低3haは必要になることが指摘できた。採蜜量は、気象条件によって大きく変動するが、1箱から18kgほどであり、それを商品化した売価から菜の花10a当たり33,000円の売上となることが計算された。 これは菜の花の蜜源としての評価といえ、これまで作物、果樹を蜜源として経済評価することはなされてこなかったので先駆的な事例分析といえる。 授粉効果については、文献等の調査によっても定量的に把握することは難しいことが明らかであるが、養蜂業者、耕作者・果樹栽培者ともに授粉効果は認めており、双方の評価の大小が地代となって表れていることが示唆された。また授粉に関わって水田作との関連や生物多様性の重要性の認識がなされていた。地代については花の種類による違いがあることから、その相違を踏まえて、経済学的に分析する必要があるといえた。
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