2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22659029
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 洋史 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (80206523)
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Keywords | 薬剤反応性 / 特異体質性毒性 / プロテオーム / 免疫応答 / HLA / アバカビル / 生体分子 / 薬理学 |
Research Abstract |
薬物の副作用は、中毒性機序と特異体質性機序によるものに大別でき、特異体質性副作用に関してはその発症機序に不明な点が多い。近年、幾つかの特異体質性副作用とHLA遺伝子多型の問に、密接な相関が見出されてきており、その関連性を説明可能なスキームとして、(1)薬物の反応性代謝物が細胞内タンパク質に付加し、(2)生成した異常タンパク質の分解物が、特定の遺伝子型のHLAでのみ抗原提示され、(3)免疫系の活性化が生じて副作用発症につながる、という一連の反応が仮説として提唱されている。本申請研究では、現在までほとんど情報が無い(2)の部分に焦点を絞り、「何故特定のHLA多型でだけ、免疫系の活性化が生じるのか?」という最も肝要な部分の分子メカニズム解明を目的として検討を行った。平成23年度は前年度に合成法を確立した、アバカビルのシクロプロパン環をアルキンに変換した誘導体を用い、アバカビルの反応性代謝物が付加したペプチドを回収することを目的に検討を開始した。その結果49種類のアバカビル付加ペプチドが検出されたが、HLA-B*5701によって特異的に細胞表面に提示されると考えられるものは見いだされなかった。そこで本研究計画の前提条件となっている、上記(1)の学説自体が成立しない可能性も含めてさらに検討を進めた。その結果、未変化体のアバカビル自体がHLA-B*5701によって特異的に細胞表面へ提示されることが明らかとなった。この点は細胞表面の酸洗浄法および精製HLAからの抽出法の2つの方法で確認され、従来の説を覆す大きな進展となった。HLA-B*5701がアバカビルを単独で提示しているのか、何らかの共提示されるペプチドが存在するかを明らかにする検討を現在進めており、この結果と併せて論文報告する予定である。
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