2010 Fiscal Year Annual Research Report
自閉症治療のための創薬に向けた行動薬理学的モデル動物システムの開発
Project/Area Number |
22659190
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
水口 雅 東京大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (20209753)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 和隆 財団法人東京都医学研究機構, 東京都精神医学総合研究所, 副参事研究員 (60281656)
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Keywords | 自閉症 / 結節性硬化症 / 薬物療法 / トランスレーショナルリサーチ / シグナル伝達 |
Research Abstract |
結節性硬化症はTSC1またはTSC2遺伝子の変異に起因する常染色体優性遺伝疾患で、高率に知的障害と自閉症を合併する。単一遺伝子変異による自閉症の原因疾患の中では、最も頻度の高い疾患である。結節性硬化症に合併する自閉症、ひいては自閉症一般の治療を目指すtranslational researchの萌芽的研究として、本研究はモデル動物(Tsc1^<+/->およびTsc2^<+/->マウス)における自閉症様行動異常の有無を調べた。その結果、両モデルマウスの身体所見は野生型と同等であった。運動については、open field testにおいてオスの運動量がメスより高かったが、遺伝子型による差はなかった。Pole test、rotarod testの結果にも遺伝子型による差はなかった。自閉症様行動に関して、変異マウスは野生型マウスに比しsocial interaction testにおける新奇マウスの探索時間が有意に短く、立ち上がり行動が有意に多かった。その他の行動試験、すなわちtube test、novel object test、food exploring testおよびlight/dark box testにおける異常行動はみられず、上記の自閉症様行動は見せかけだけのものではないと考えられた。TSC1遺伝子産物hamartinおよびTSC2遺伝子産物tuberinはmTOR(mTORC1>活性を負に制御しており、結節性硬化症ではこれらの機能が低下するためmTOR活性が異常に亢進する。したがってラバマイシン投与によるmTOR活性抑制が知的障害や自閉症を改善する可能性も期待される。実際にラバマイシンがTsc2^<+/->マウスの記憶学習障害を改善したという先行研究もある。 本研究ではラバマイシンが自閉症様行動を正常化するかについて、今後検討を進める予定である。
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