2010 Fiscal Year Annual Research Report
Epigenetic修飾の包括的・統合的解析による新規癌幹細胞制御法の確立
Project/Area Number |
22659233
|
Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
宇都宮 徹 徳島大学, 病院, 講師 (30304801)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
島田 光生 徳島大学, 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (10216070)
岩橋 衆一 徳島大学, 病院, 医員 (30531751)
|
Keywords | エピジェネティック修飾 / がん幹細胞 / 幹細胞マーカー / ヒストン脱アセチル化 / 抗癌剤抵抗性 / 分化誘導 |
Research Abstract |
〔研究の目的〕癌幹細胞研究は癌の治療抵抗性を克服することを目的としている。われわれは癌細胞の遺伝子発現を制御しているエピジェネティック修飾に着目し、癌幹細胞の抗癌剤抵抗性の機序解明と新規治療法の開発をめざす。 〔研究実績の概要〕 1.抗癌剤とヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤の:併用効果:ヒト胆管癌細胞株(HuCCT1)を用いて胆管癌に有効な抗癌剤(Gemcitabine:GEM)とHDAC阻害剤(valproic acid:VPA)の併用効果をMTT assayにてin vitroで評価した。GEM:5nMとVPA:0.5mMは各々単独では効果を認めないが、併用により有意な細胞増殖抑制効果を認めた。したがって抗癌剤にエピジェネティック修飾を目的としたVPAを併用することで抗癌剤感受性が増強することが考えられた。 2.HDAC阻害剤による癌幹細胞の分化誘導(1)Cancer sphereの作製:ヒト大腸癌細胞株(HCT-116)を用いて癌幹細胞の特徴を有するとされるCancer sphereを特殊培養環境下にて作製した。Cancer sphereは、Oct4,Nanog,Bmi-1などの幹細胞特異的遺伝子(stemness gene)やCD44,EpCAMなどの癌幹細胞マーカーを高発現していることを確認した。(2)VPAによる形態変化:Cancer sphereの形態は、VPAを培養液中に加えることで濃度依存性に徐々に崩れ、通常培養の細胞集団(癌幹細胞の特徴を有さない)へと変化した。(3)VPAのstemness gene発現への影響:Oct4,Nanog,Bmi-1遺伝子発現をRT-PCR法にて評価した結果、VPA投与により有意に発現低下を認め癌幹細胞としての性質を失いつつあると考えられた。(4)抗癌剤(5-FU)とVPAの併用効果:癌幹細胞マーカーであるCD44とEpCAMの遺伝子発現は、5-FU(0.5μg/mL)単独では有意な変化を認めないが、VPAの併用により5-FU(0.1μg/mL)でも有意な発現減弱を認めた。 以上のごとく本年度は、抗癌剤とエピジェネティック修飾のひとつであるヒストン脱アセチル化酵素阻害剤を併用することで癌幹細胞の分化誘導が可能となり、その結果、抗癌剤抵抗性がある程度解除できる可能性が示された。来年度は、更なる分子機序解明をめざしてDNAマイクロアレイ法を用いて綱羅的遺伝子発現解析を行う予定である。
|
Research Products
(5 results)