2011 Fiscal Year Annual Research Report
乳がん化学療法を受ける患者のバイオマーカーを指標とした運動の効果検証
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22659404
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Research Institution | Research Institute, International Medical Center of Japan |
Principal Investigator |
外崎 明子 独立行政法人国立国際医療研究センター, 成人看護学, 教授 (20317621)
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Keywords | がん / 身体活動量 / 身体組成 / バイオマーカー / インスリン抵抗性 / 抑うつ |
Research Abstract |
1.乳がん化学療法中、療法後の患者の多くは座りがちな生活習慣となり身体活動量が低下しやすい。米国におけるコホート研究では、乳がん診断後の身体活動の活発な女性は非活動的な者に比べて生存率が高いこと、乳がん診断前後の体重の変化を±5%以内に維持している者の方が予後が良好なこと等が研究報告され、これらの対象への運動は推奨されることが明らかとなり、適切な身体活動を治療中も維持することの重要性が文献検討の結果示された。 2.パイロット・スタディとして、乳がん化学療法を受けた31名を対象に化学療法終了後2日~2週間の身体活動量を測定した結果、一日の総活動時間の7割以上を2Mets未満(座って作業)で過ごしており、座りがちな生活スタイルであることが明らかとなった。 3.乳がん化学療法後の身体不活動ががん予後に悪影響を与えるのは、高インスリン血症、インスリン抵抗性の増大によることが米国において近年、示唆されている。日本人における乳がん患者の身体活動量とインスリン抵抗性との関連性はこれまで検討されていない。米国人と日本人では身体不活動や体重増加によるインスリン抵抗性の変化は異なる傾向にあると示唆されており、日本人の方が身体不活動や摂取カロリーの過剰で容易にインスリン抵抗性が悪化すると示されている。よって日本人の乳がん化学療法を受ける患者の身体活動量とインスリン抵抗性の関連性を明らかにすることは、身体活動の効果を評価し、予後を患者が自らの力で改善するための再発予防に向けた自己コントロール方法となりえる。これらの関係性を明らかにしていくための基礎的データとなる本研究計画の実施に向け、平成24年度前半期での倫理審査委員会の承認をめざし、研究フィールドを確保し、調整を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度内に乳がん化学療法を受ける患者の身体活動量とバイオマーカーであるインスリン抵抗性の関連性を検証するデータを得られる見込みがあるため
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Strategy for Future Research Activity |
これまで運動効果の指標となるバイオマーカーとして、心身の活性を示す「スッキリとした爽快な感覚」と血中または尿中のセロトニンとの関連性を考えてきた。しかしながら研究の実行可能性を考慮し、また文献検討の結果、インスリン抵抗性が対象者の予後といったQOLに直結するファクターのバイオマーカーとなりえることが判明した。このために運動の効果をインスリン抵抗性との関連で検証することとし、運動による気分状態の変化を抑うつ状態の評価指標との関連性で検証することとした。
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