2011 Fiscal Year Annual Research Report
脊髄損傷後の歩行機能再獲得のための神経リハビリテーション方法の開発
Project/Area Number |
22680045
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Research Institution | National Rehabilitation Center for Persons with Disabilities |
Principal Investigator |
河島 則天 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所・運動機能系障害研究部, 研究員 (30392195)
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Keywords | 脊髄損傷 / 歩行 / リハビリテーション / 神経可塑性 |
Research Abstract |
本研究では、近年盛んに行われている中枢神経再生に関する研究成果に呼応して、その後の歩行機能再獲得を円滑に実現するための効果的なリハビリテーション方法を開発することを目指す。具体的には、脊髄損傷後の歩行機能獲得のkey wordとして歩行運動の発現に貢献すると目される脊髄中枢パターン発生器(CPG)の性質に着目、脊髄CPGの性質についての神経生理学的研究を行うと共に、その活動を励起させる手段を検索し、新たなコンセプトに基づく神経リハビリテーション方法を提案する。本研究の目的は脊髄損傷によって歩行機能障害を有する患者に対し、脊髄CPGの活動を励起する適切な神経入力を与えることによりuse-dependent plasticityを促し、合目的的に歩行機能回復を実現する神経リハビリテーション方法を考案することである。 【23年度の研究成果】 23年度は、脊髄不全損傷者に対する歩行リハビリテーションの有効性に関する縦断的研究を引き続き進め、これまでに6名が終了、1名が現在進行中である。12週間の動力歩行装置を用いた受動ステッピングトレーニングによって、過剰な痙性麻痺の減弱傾向と、歩行中の荷重入力をトリガにした合目的的な筋活動応答の発現を示唆する重要な所見が得られた。また、上肢と下肢間の神経連絡と、その歩行への貢献度についての実験を実施し、上肢運動に伴う随伴的な下肢への神経投射のみならず、脊髄の異なる髄節間を跨ぐ神経回路が活性化される可能性が示唆された。これらの知見は、脊髄損傷後の歩行機能回復のkey wordとなる脊髄CPGの性質についての重要な情報を与え得るものであり、本研究の中核となる貴重な知見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
歩行運動に関連した脊髄神経回路についての実験的検討は順調に進んでおり、3年目に新たに脊髄硬膜外刺激を用いた実験に展開できる足がかりを得ることができた。脊髄不全損傷者を対象とした12か月の歩行リハビリテーションの効果を検証する縦断的実験は、震災の影響で予定より実施人数に若干の不足があるが、最終年度までに予定の人数を終えることは十分に可能と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
歩行機能回復のための具体的な方法論確立を目指して、科学的根拠を得る基礎実験的視座と等分に、歩行リハビリテーションを行う際の注意点や患者さんに対するケアなどについても体系的に情報を整理していく予定である。学会発表、論文発表のみにとどまらず、臨床現場でリハビリテーションに携わる理学療法士、作業療法士との意見交換、情報提供を積極的に行うなど、研究成果の還元に鋭意、努力していく予定である。
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Research Products
(5 results)