2011 Fiscal Year Annual Research Report
グローバルスケールの津波災害インパクトの即時的開示と国際災害救援活動への新展開
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22681025
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
越村 俊一 東北大学, 災害科学国際研究所, 教授 (50360847)
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Keywords | 東日本大震災 / 津波 / 防災 / リモートセンシング / GIS |
Research Abstract |
2011年3月11日,戦後はじめて我が国の臨海都市を襲った津波の広域被災地は,東北地方太平洋岸で440平方キロ以上に達した.その被害は,津波の遡上に伴う甚大な人的被害に加え,船舶・瓦礫の漂流・漂着,家屋被害,海岸構造物被害,道路・ライフライン被害,水産業被害,地形変化,火災など,これまで指摘されていた津波被害の全てが発生した.また,原子力発電所の事故,行方不明者の捜索活動の難航や,傷病者の搬送問題,仙台空港の機能停止,流失した自動車(宮城県だけで14万台)など,臨海都市部の新たな津波被害の様相も確認されている.これほどの広域津波被災地における被害の全容把握は現地調査だけでは不可能である. 津波災害の全容解明を目標として,以下の課題に取り組んだ. リモートセンシングと現地調査により,広域津波被災地における被害の量的な把握と空間分布を明らかにした.具体的には,衛星画像(光学センサ,合成開口レーダー)や航空写真(直下視,斜め視),レーザー測量の解析から津波浸水域,家屋被害棟数,瓦礫量等を推計した. 光学衛星画像解析により,津波浸水域を把握できることを確認した.特に可視光のBlue bandと近赤外域を考慮した指標を用いることで,半自動的な浸水域の抽出が可能であることが分かった.次に,航空写真の判読により流失建物の分布および量的な把握を行った.瓦礫域の空間的把握には,高解像度のデジタル航空写真や高分解能衛星画像を利用すれば,70%以上の精度での抽出が可能であることが分かった. また,津波の数値解析と被害調査結果を統合し,建物流失率を津波の流体力学的諸量の関数として表現する津波被害関数を構築した.得られた成果は仙台市での復興計画立案に用いられるなど,重要な貢献を果たすことができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
東日本大震災の発生により,本研究申請時の計画とは異なる研究の展開があった.本研究の題目にまさに一致する「グローバルスケールの津波災害」が発生し,被災地での取り組みや膨大な質と量におよぶデータの解析が可能になったことで,当初の計画以上の知見および成果を得ることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
巨大地震災害発生直後の広域被害把握のための技術体系を構築をする.広域被害把握までの流れは,衛星画像解析による津波浸水流況の把握,浸水域内建物棟数の推計,航空写真の判読による建物被害の把握,航空写真・衛星画像による瓦礫量の把握という,4つの技術で構成し,2011年東北地方太平洋沖地震津波災害におけるインプリメンテーションを通じて,その有効性と課題を明らかにする. 発災直後の広域被害把握を迅速に実現するためには,解析技術の発展に加えて,観測態勢のさらなる充実も重要な課題である.たとえば,世界中のどこで災害が発生しても,かならず1日以内に光学センサや合成開口レーダーを搭載した人工衛星が緊急観測できるという条件を,人工衛星の軌道決定の要件として検討し,一元化した緊急観測の中でその結果を国際社会で共有する仕組みも必要であろう.
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Research Products
(14 results)