2011 Fiscal Year Annual Research Report
パラジウム錯体による異性化重合を活用する高機能ポリオレフィンの創製
Project/Area Number |
22685012
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
竹内 大介 東京工業大学, 資源化学研究所, 准教授 (90311662)
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Keywords | 立体選択的重合 / 環化重合 / 異性化重合 / パラジウム錯体 / シクロオレフィン / 液晶高分子 / 一酸化炭素 / 交互共重合 |
Research Abstract |
従来の重合法では側鎖官能基の平均的な密度の制御された高分子の合成は比較的用意であるが、その分布を完全に制御することは不可能であった。本研究ではジイミン配位子を有するパラジウム錯体によるオレフィン類の異性化重合を利用し、様々な官能基の密度、'分布が完全に制御された高分子の合成と、その機能の探索を目指して研究を行っている。昨年度までに、パラジウム錯体が4-アルキルシクロペンテンや3-アルケニルシクロペンテンの付加異性化重合を引き起こし、シクロペンタン骨格が主鎖上に山定の間隔で配置された高分子を与えることを見いだしている。環の立体構造が全て一定にそろった高分子は液晶性を示す。アルケニルシクロヘキサンも向様に重合し、トランス-1,4型に制御された六員環構造を主鎖に有するポリマーが得られる。本年度は、ジイミンパラジウム錯体がメチレンシクロヘキサンの異性化重合を引き起こすことを見出した。得られたポリマーは、アルケニルシクロヘキサンと同様にトランス-1,4-シクロヘキサン環を含んでいる。1,1-二置換オレフィンは配位重合性が低く、単独重合の例は極めて限られており、本重合は非常に珍しい。ジイミンパラジウム錯体は一酸化炭素とメチレンシクロヘキサンとの共重合にも有効であり、この場合にはトランス-1,2-シクロヘキサン環を含むポリケトンが得られる。C2対称ジイミンパラジウム錯体は4-メチルシクロペンテンの立体規則性重合を引き起こす。得られるポリマーはキラルであることから、光学活性錯体を用いた不斉重合について検討を行った。光学活性ジイミセパラジウム錯体は、ジイミン配位子と光学活性ビスオキサゾリンパラジウム錯体との配位子交換により合成した。得られた錯体は4-メチルシクロペンテンの不斉重合を引き起こし、光学活性ポリマーが得られることが分かった。様々なアルキル基を有する1,6,11-トリエンのダブル環化重合が円滑に進行し、ビスシクロペンタン環を有するポリマーが得られることも見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究ではすぐれた機能をもつポリオレフィンの創製を目指し、種々め極性官能基の組み込まれた環状置換基を有するポリマーの合成を行なっている。これまで用いてきたアルケニルシクロヘキサンは重合性は高いものの、官能基の立体選択的な導入が困難である点が問題であった。昨年度新たに重合することを見出したメチレンシクロヘキサンは官能基導入が比較的容易である点で、高機能ポリオレフィンの設計がより容易になった。アルキルシクロペンテン類の重合については、光学活性ポリマーが得られるようになりつつある。また、異なる官能基を含むトリエンの重合も可能であることが分かった点からも、今後2年間で高機能ポリオレフィン創製のための分子設計のめどがある程度たったと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
様々な官能基の導入されたアルケニルシクロヘキサン、メチレンシクロヘキサンの合成を行い、その重合を行う。特に集合性のコレステロール骨格を有するメチレンシクロヘキサンは比較的容易に合成できる。アルキルシクロペテン類の重合については、得られるポリマーの光学純度が不十分だと考えられるため、さらなる触媒設計を行う。ごく最近、容易に合成可能なビスアルコキシメチルヘプタジエンの重合が円滑に進行することを見出している。本年度は同様の構造を有するトリエンに対して両親媒性官能基や発光性官能基を導入し、それらの側鎖官能基が均一に分布したポリオレフィンの合成を行う。次年度は本年度得られたポリマー群の機能性について評価を行う。
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